特定公共施設等利用法(武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律)          04・9作成

1 「特定公共施設等」について 2 「指針の策定」について *
3 「対処措置等の的確かつ迅速な実施を図る」について 4 「特定の者」とは一体誰か 5 罰則規定

何のための法律か

目的 第1条この法律は、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関し、指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、その総合的な調整を図り、もって対処措置等の的確かつ迅速な実施を図ることを目的とする。

   法律の名称からしても、その「目的」からしても、何のための法律かが分かりにくく、また、「誰(何)が」も明らかでない。まずは、条文に表れた「1特定公共施設等」2指針の策定「3対処措置等の的確かつ迅速な実施を図る」についてその内容を具体化していくことにする。

1 「特定公共施設等」について

第2条の「定義」にその説明があるがそれを整理すると次のようになる。

特定公共施設 港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域、電波
港湾施設 港湾法第2条第5項各号の港湾施設(国有財産法第3条第3項又は地方自治法第238条第4項の普通財産であるものを除く。)をいう。
飛行場施設 空港整備法第2条第1項の空港の施設及び同項の空港以外の政令で定める公共の用に供する飛行場(航空法第56条の4第1項の規定に基づき公共の用に供すべきものとして指定された着陸帯その他の施設のある自衛隊の設置する飛行場を含む。)の施設をいう。
道路 道路法第2条第1項の道路道路運送法第2条第8項の一般自動車道その他の一般交通の用に供する道をいう。
電波 電波法第2条第1号の電波をいう。

※「海域」と「空域」については条文としては定義されていない。
※港湾数-1081(重要・地方)、空港数-101(第一種・二種・三種・その他 )

   要するに、海の港、空の飛行場、陸の道路とそれに付随する施設を加え、そして、電波、さらに、空と海ということになるが、この膨大な生活関連施設と空間を、有事の際にどのように利用するというのだろう。

[参考法令]

港湾法第2条5から 
1.水域施設…航路、泊地及び船だまり
2.外郭施設…防波堤、防砂堤、防砂堤、防潮堤、導流堤、水門、こう門、護岸、堤防、突堤及び胸壁
3.係留施設…岸壁、係船浮標、係船くい、さん橋、浮さん橋、物揚場及び船揚場
4.臨港交通施設…道路、駐車場、橋りよう、鉄道、軌道、運河及びヘリポート
5.航行補助施設…航路標識並びに船舶の入出港のための信号施設、照明施設及び港務通信施設
6.荷さばき施設…固定式荷役機械、軌道走行式荷役機械、荷さばき地及び上屋
7.旅客施設…旅客乗降用固定施設、手荷物取扱所、待合所及び宿泊所
8.保管施設…倉庫、屋積場、貯木場、貯炭場、危険物置場及び貯油施設
8の2.船舶役務用施設…船舶のための給水施設、給油施設及び給炭施設(第13号に掲げる施設を除く。)、船舶修理施設並びに船舶保管施設
9.港湾公害防止施設…汚濁水の浄化のための導水施設、公害防止用緩衝地帯その他の港湾における公害の防止のための施設
9の2.廃棄物処理施設…廃棄物埋立護岸、廃棄物受入施設、廃棄物焼却施設、廃棄物破砕施設、廃油処理施設その他の廃棄物の処理のための施設(第13号に掲げる施設を除く。)
9の3.港湾環境整備施設…海浜、緑地、広場、植栽、休憩所その他の港湾の環境の整備のための施設
10.港湾厚生施設…船舶乗組員及び港湾労務者の休泊所、診療所その他の福利厚生施設
10の2.港湾管理施設…港湾管理事務所、港湾管理用資材倉庫その他の港湾の管理のための施設(第14号に掲げる施設を除く。)
11.港湾施設用地…前各号の施設の敷地
12.移動式施設…移動式荷役機械及び移動式旅客乗降用施設
13.港湾役務提供用移動施設…船舶の離着岸を補助するための船舶、船舶のための給水、給油及び給炭の用に供する船舶及び車両並びに廃棄物の処理の用に供する船舶及び車両
14.港湾管理用移動施設…清掃船、通船その他の港湾の管理のための移動施設
空港整備法第2条から整理
1.第1種空港…成田国際空港、(中部国際空港)、関西国際空港及び国際航空路線に必要な飛行場であつて政令で定めるもの(建設中を含め5空港-筆者)
2.第2種空港…主要な国内航空路線に必要な飛行場であつて、政令で定めるもの(建設中を含め26空港-筆者)
3.第3種空港…地方的な航空運送を確保するため必要な飛行場であつて、政令で定めるもの(建設中を含め56空港-筆者)
航空法第56条の4
 国土交通大臣は、公衆の利便を増進するため必要があると認めるときは、自衛隊の設置する飛行場について、その着陸帯その他の施設を公共の用に供すべき施設として指定することができる。
道路法第2条
 この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等道路と一体となつてその効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含むものとする。
第3条
 道路の種類は、左に掲げるものとする。
1.高速自動車国道
2.一般国道
3.都道府県道
4.市町村道
道路運送法第2条8
 この法律で「自動車道」とは、専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で道路法による道路以外のものをいい、「一般自動車道」とは、専用自動車道以外の自動車道をいい、「専用自動車道」とは、自動車運送事業者が専らその事業用自動車の交通の用に供することを目的として設けた道をいう。
電波法第2条 
1.「電波」とは、300万メガヘルツ以下の周波数の電磁波をいう。

2 「指針の策定」について(第6、10、12、13、15、17条)

   対策本部長が、対処基本方針に基づいて、それぞれ「港湾施設の利用指針」「飛行場施設の利用指針」「道路の利用指針」「海域の利用指針」「空域の利用指針」「電波の利用指針」を作成することになっている。それは「特定の者の優先的な利用」を確保し、「対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るために」作成される。ここでいう「対策本部長」や「対処基本方針」とは「武力攻撃等事態法」におけるものである。

第9条 政府は、武力攻撃事態等に至ったときは、武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という。)を定めるものとする。
2 対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
一武力攻撃事態であること又は武力攻撃予測事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実
二当該武力攻撃事態等への対処に関する全般的な方針
三対処措置に関する重要事項(3〜14項略)
第11条 対策本部の長は、武力攻撃事態等対策本部長(以下「対策本部長」という。)とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもって充てる。(2〜7項略)
第12条 対策本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置に関する対処基本方針に基づく総合的な推進に関すること。
二前号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務

3 「対処措置等の的確かつ迅速な実施を図る」について

   ここで、新に「4 特定の者」という意味不明の用語が登場したが 、それが誰なのかは後述することにして、「3対処措置等の的確かつ迅速な実施を図る」について触れたい。このことは、当法律の目的でもあるわけだが、上記6項目についてそれぞれの対処措置が行われる。

(1)港湾施設管理者に対して(第7、8、9条)

対策本部長 @特定者への優先利用 →要請 港湾管理者 指示・命令→ 港湾利用者(船長等を含む) ・許可その他の変更
・許可その他の取り消し
・船舶移動
←具申(要請拒否)
@特定者への優先利用 →請求 内閣総理大臣 →指示
←具申(指示拒否)
@特定者への優先利用 →請求 内閣総理大臣 →通知
A緊急な場合 →指揮 国土交通大臣 →強制執行
* B船舶の移動が必要 →指揮 →命令 船長等 船舶移動

(2)飛行場施設管理者に対して(第11条)

対策本部長 @特定者への優先利用 →要請 飛行場施設管理者 指示・命令→ 他の飛行場利用者(機長を含む) ・必要な指示をし
・条件を付し
・変更をする
・航空機移動を命ずる
←具申(要請拒否)
@特定者への優先利用 →請求 内閣総理大臣 →指示
←具申(指示拒否)
@特定者への優先利用 →請求 内閣総理大臣 →通知
A緊急な場合 →指揮 国土交通大臣 →強制執行
* B航空機移動が必要 →指揮 →命令 機長等 航空機移動

(3)道路使用者に対して

   道路に関しては、ただ、「道路の利用指針」を作成するというだけで、その対処については条文がない。「道路の利用指針」の内容がどのようなものかはまだ未定だが、すでに明らかになった「国民保護法」「自衛隊法」「米軍支援法」等に出てくる「道路」に関する条文内容には概ね次のようなものがある。

(住民避難時の交通の規制)、(自衛隊の防衛出動時における交通の規制)、(自衛隊出動時の道路運送法 の適用除外)(同じく道路運送車両法 の適用除外)(同じく道路交通法の特例)(米軍の優先的通行)等。

   これからもわかるように、前述した高速道路、国道、都道府県道、市町村道が有事の際には一般民間車両の通行を規制し、自衛隊と米軍車両について優遇される措置であることはまちがいないだろう。

(4)海域航行船舶に対して(第14条)  

執行者 内容
海上保安庁長官 特定海域 範囲 指定 航行船舶 制限する
期間 航行時間

(5)空域飛行航空機に対して(第16条)

国土交通大臣は、「空域の利用指針」に基づき、航空機の航行の安全を確保するため、航空法第80条、第96条及び第99条の規定による措置を適切に実施しなければならない。

という1条によってすべてが説明される。それは、条文のなかの「航空法第80条、第96条、第99条の規定」に含まれているからである。たとえば、航空法第80条は次のようになっている。

(飛行の禁止区域)
航空機は、国土交通省令で定める航空機の飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域の上空を飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

  96条は長い条文なので、2、3項は略し1項のみ掲載する。第99条は(情報の提供)である。

(航空交通の指示)
第96条 航空機は、航空交通管制区又は航空交通管制圏においては、国土交通大臣が航空交通の安全を考慮して、離陸若しくは着陸の順序、時機若しくは方法又は飛行の方法について与える指示に従つて航行しなければならない。

   このように見てくると、航空機自体が普段から細かい法規によって飛行(または運行)している性質上、有事の場合はその法律に一言、たとえば、「飛行禁止区域設定」を付加するだけで事足りるのである。つまり、「飛行禁止区域」を設定し、民間機は飛行禁止にし、「特定の者」のみの飛行を許可すれば事足りる。

(6)無線通信使用者に対して(第18条)

  それに比べて、「電波」は目に見えないだけに規制は複雑になる。条文は、第18条だけだが、1項から4項まである。1項を整理すると次のようになる。

第18条 総務大臣は、無線通信のうち特定のものを、他の無線通信に優先させるため、「電波の利用指針」に基づき、免許の条件の変更、自衛隊法第112条第3項の規定による総務大臣の定めの変更その他必要な措置を講ずる。

  執行者は総務大臣であり、執行するのは、(ア)免許の条件の変更、(イ)自衛隊法第112条第3項の規定による総務大臣の定めの変更(ウ)その他必要な措置の三点となる。前段の二点について触れる。

(ア)免許の条件の変更について

   無線通信はもちろん、法に基づいておこなわれるが、「電波法」第104条の2第1項に「予備免許、免許又は許可には、条件又は期限を付することができる。」とある。つまり、無線通信の免許や許可を与えた際に付与した「条件又は期限」に対して、有事の場合にそれを制限することである。たとえば、使用周波数の使用に対して制限したり、禁止したりすることである。

(イ)自衛隊法第112条第3項の規定による総務大臣の定めの変更について

   現在自衛隊が使用している電波に対して、「免許及び検査並びに無線従事者に関するもの」には「電波法」の適用除外規定となっているが、周波数の使用に関しては、混信防止の意味合いから総務大臣によって一定の調整が行われている。今回の「自衛隊法第112条第3項の規定による総務大臣の定めの変更」というのは、その歯止めを取り払おうとするものである。

第18条4 第1項第1号に掲げる無線通信を行う無線局については、電波法第56条の規定は、適用しない。

   第1項で他の無線局に優先させた特定の無線局に対する特例の追加条項である。電波法第56条で規制されている「混信等の防止」に対して、「第1項第1号に掲げる無線通信を行う無線局」はその適用から外れている。ちなみに、その無線局は「事態対処法第2条第7号イ(1)若しくは(2)に掲げる措置(中略)に必要な無線通信」とあって、その条文はつぎのとおりである。

7-イ武力攻撃事態等を終結させるためにその推移に応じて実施する次に掲げる措置
(1)武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動
(2)(1)に掲げる自衛隊の行動及びアメリカ合衆国の軍隊が実施する「日米安保条約」に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置

   つまり、戦闘を含む戦争状況の中で、自衛隊と米軍及び、それらと通信する無線局に対する特例措置ということになる。以上のことからも明らかなように、有事になれば、民間の電波使用を制限し、軍事の電波を拡大するという方向にすすんでいることは間違いない。すでに先程あげた自衛隊の使用する電波についての緩和が検討されている。「(ウ)その他」の具体的なことが同様な方向で行われるのはほぼまちがいないだろう。

4 「特定の者」とは一体誰か

   すでに明らかなように、この法律は有事の際に、国民の日常生活に欠かせない道路、港、空港とそれとつながる海と空、そして通信を、自衛隊と米軍のために優先的に使用させるものである。港湾や空港のその多くは、自治体や民間が管理しているものである。したがって、この法は、有事法制に基づいて 「○○の利用指針」を作成し、自治体や民間の施設管理者に最初は「要請」をするが、拒否されれば、「指示」や「命令」「強制執行」と問答無用の措置ができるようになっている。

   一方では、管理者の「具申」権もあるが、上記のように形だけのものとなっている。現在でも、沖縄県などでは、米軍の民間空港の強制使用(修理や給油等の理由による強制着陸)が当然のようになっている。管理者である県が拒否しても、米軍は無視して空港を使用している状況がある。「安保条約」に基づいて行われる日常的な米軍優先は、この法律によってさらに拍車がかかるのみならず、「安保条約」そのものの変質さえもあり得るのである。そしてこのことは、有事法制全般にわたって共通し、日本の将来においても由々しき状況の現れと言わなければならない。 

5 罰則規定

執行者 内 容 罰 則
海上保安庁長官 ・特定の海域 ・航行船舶 ・航行時間 制限 ・3月以下の懲役 ・30万円以下の罰金
・特定の範囲
・特定の期間


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