国民保護法(改訂版)〜「国民保護法」から見えてくるもの〜                       04・9作成

関連内容・ 「動きだした地方自治体」「自衛隊の先導性」「自衛隊の沖縄戦での住民避難考察批判」

この項で使用される次の用語については、断りがない場合は、次の通りとする。なお、指定(地方)行政機関や指定公共機関は国が指定したものである。

国家、国家権力(内閣・国会・裁判所を含む)、政府
地方自治体 都道府県・市町村、地方公共団体、自治体
指定行政機関 内閣府、国家公安委員会、警察庁、防衛庁、金融庁、総務省、消防庁など政府機関    詳細はこちら
指定地方行政機関 沖縄総合事務局、管区警察局、防衛施設局、総合通信局、など政府地方機関       詳細はこちら
指定公共機関 消防研究所など独立行政法人、日本赤十字社、日本放送協会、日本道路公団、成田国際空港、JR東日本、日本電信電話、日本通運、北海道電力、KDDI、NTTドコモなど               詳細はこちら
指定地方公共機関 地方公共団体が指定する公共機関                                                      詳細はこちら
関係団体 不確定
公共的団体 都道府県や市町村で作られ、公共性を持つ住民の自主的な登録団体。具体的には不明。
自主防災組織 自主組織、防災組織、消防団体、自主消防隊、婦人消防隊、等々。

   ※この項では、「国民保護法」について、条文の若い順に解説しています。各見出しごとにクリックしてください。

1「素案」から「国民保護法」への転換 2国民保護法の目的等(1条〜3条) 3国民の協力等(4条、11条、16条)
4国民保護の具体的措置(10条〜96条) 5武力攻撃災害への対処(第97条)〜(第128条) 6避難生活(第139条)〜(第151条)
7財政上の措置等(第159条〜第171条) 8緊急対処事態に対処するための措置(第172条〜183条) 9結びにかえて

1 「素案」から「国民保護法」への転換

国家権力が末端の自治体へ

国家権力が末端の自治体へ

 第一段階は「素案」(02年10月8日)で、目的とも言える「基本的な考え方」の最初の二つが「国民の生命、身体および財産の保護」と「国民の自由と権利の尊重」であった。そして、「素案」を法制上の体裁にしたのが「基本的な構成」であるが、それは、内容を論理的に構成し「基本的考え方」の実現にむけ自治体や国はどうするか、という展開となっていた。

 しかし、戦争で「国民の生命…保護」や「自由と権利の尊重」が貫かれることはあり得ない。戦争は国家と国家の戦いであり、仮にその懸念が覆されて、これらを貫く戦争ができるとすればそれは国家権力を伴わない独立戦争や革命戦争となる。発達した資本主義国の国家権力が発動する戦争ではあり得ない構図となり、「武力攻撃対処法」とも整合しない。政府が、このような「基本的な考え方」を「知事会」で公表したのは、「有事法制」が憲法で保障された「戦争放棄」「基本的人権」「国民主権」をなし崩しにするであろう、という国民の厳しい目があったからにほかならない。

 その後、国会に提出された「輪郭」(02年11月11日)では、この「考え方」が消え、さらに、「社会的弱者の保護」等は「配慮事項」に格下げされた。これが第二段階の「輪郭」である。しかし、この転換は「有事法制」の本質を納得させるものであった。「日本に攻撃を仕掛けてくる国の存在は考えにくい」(政府見解)状況での戦争遂行は、「国に地方自治体、その他が協力する」(「輪郭」)方が理解しやすい。また、構成上の機能構成から機関構成への転換も、上部から下部への命令が機能しやすく、総動員体制の近代戦争では都合が良い。

 さて、国が作成した「基本指針」(32条)を、行政機関と自治体、公共機関に下ろし、委譲した権限の不履行も免れないという仕組みは、第三段階の「要旨」(04年2月25日)を経て「国民保護法」(04年6月15日)で大方出揃った。国が「基本指針」に何を盛り込むかは今後であるが、これまでの論理性からすれば、国は国民をどうしょうとしているのか、という点に集約される。

                                                                                         経過詳細はこちら

2 国民保護法(04年6月14日)

目的・定義・責務 国民を何から守るのか

(1)目的・定義・責務(1条〜3条)

定義 「武力攻撃災害」とは、武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡、負傷、火事、爆発、放射性物質の放出、その他の人的・物的災害
目的 ○国民の生命・身体・財産の保護
○国民生活・国民経済に及ぼす影響を最小に
国民保護の措置 ○警報の発令、避難の指示、被災者の救助、消防等に関する措置
○施設及び設備の応急の復旧に関する措置
○保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置
○輸送及び通信に関する措置
○国民の生活の安定に関する措置
○被害の復旧に関する措置
責務 地方自治体 公共機関
○「基本方針」の決定
○地方公共団体・指定公共機関を支援
○国費による適切な措置
「基本的な方針」に基づき、関係機関の実施措置を総合的に推進 各業務の実施

(2)国民を何から守るのか−「敵」はだれか

 「武力攻撃災害」からの保護となるが、その内容は上記の定義から言えばそれはまさしく「戦闘を含む戦争状況による被害」である。具体的にいえば、ある国家(または勢力)からの日本への武力行使によって引き起される「人の死亡、負傷、火事、爆発、放射性物質の放出、その他の人的・物的災害」ということになるが、海に囲まれた日本において、日本が攻撃を受けることを前提とした戦争状況をつくる武力行使とは、現代の兵器等からしておおよそ次の三つが想定され、具体的には六つの単独または複合攻撃が考えられる。

攻撃形態 空から 航空機による銃砲爆撃 艦船からの艦載機等の発進を含む。
ミサイル等攻撃
兵員降下による地上戦(潜伏)
海から 艦船による砲撃 艦船からのミサイル攻撃を含む。
兵員上陸による地上戦(潜伏)
陸では 国内潜伏または侵入による「武力攻撃」(※) テロまたはゲリラ

※新たに追加された条文「テロ」項目を前提にしたときに成立する。

 ちなみに、政府の見解も、「着上陸攻撃、空襲、ミサイル攻撃、ゲリラ(平時はテロ、有事のゲリラ)」(内閣官房内閣参事官)となっていて大差ない。しかし、全体から見れば、「有事法制」が「専守防衛」の理念で貫かれているとは言いがたく、日本の国土以外での「武力行使」も含まれる可能性があり、また、国内における治安の乱れを理由にした「有事法制」の発動にもその解釈を残している。

                                                                詳細は「米軍行動円滑化法」「有事法制の経過−25条」

 いずれにしても、法案の随所にみられる「武力攻撃」には、敵の姿を不透明にしたまま条文の内容が展開されているきらいがある。これは、「災害」という用語の使用と無関係ではない。戦争は不意に起きるものではない。にもかかわらず、「災害」という用語を使うことによって戦争状況を曖昧にしている。このことが、また、この法律の焦点ぼかしとなっている。 

 さて、守るべき「国民」についてはどうなっているのか。

3 国民の協力等(4条、11条3、16条3)

強制ではないと言うけれど 戦後補償もまだなのに

   国民の有事に対する協力を条文化したのは、次の三箇条である。(「緊急対処事態」が追加されて重複しているのは除く)。もっとも、第11条と視16条は、「公共的団体」となっていて必ずしも一人一人を指していないのが、間接的には住民への協力を説いたものと見ることができる。

第4条 国民は、協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。
2前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、強制にわたることがあってはならない。
3 国及び地方公共団体は、自主防災組織(災害対策基本法第5条第2項)及びボランティアの自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない。
第11条(第16条)3 公共的団体は、…協力するよう努めるものとする。

(1)強制ではないというと言うけれど

   国民一人一人(団体を含む)の協力の努力を規定し、それは「国民の自発的な意思にゆだねられ、強制してはならない。」と規定している。その一方、第3項では「国及び地方公共団体」が国民の「防災組織(「自主防災組織」)」を「支援するよう努めなければならない。」とする。ここに、自主的な「防災組織」とは名だけであって、国・地方公共団体が積極的に国民を組織化して行くことを義務づけている。

(参考)「災害対策基本法第5条第2項」
市町村長は、前項の責務を遂行するため、消防機関、水防団等の組織の整備並びに当該市町村の区域内の公共的団体等の防災に関する組織及び住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織(「自主防災組織」)の充実を図り、市町村の有するすべての機能を十分に発揮するように努めなければならない。

 国民一人一人には、「自発性」を約束し、 国及び地方公共団体には支援の義務を唱える。そして、末端の市町村長には、「隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織の充実を図り、すべての機能を十分に発揮するように努めなければならない。」と強制する。

 そのことは、この法案の根底に日本人の精神構造をがっちりと掴んだ者の意図が見えてくる。かつての「村八分」「非国民よばわり」に弱い日本人の弱点をついていると言えよう。国家は強制をしないが、町や村の段階では「国民」は「ボランティアの自発的な活動」に参加せざるを得なくなる。しかも、災害にたいする防災組織を戦争に対するものとして位置づける巧妙さがある。それは「戦争状況」という非日常性の「防災組織」が、日常性をもちながら「国民」を動員する組織へと変身して行くことを意味するからである。

 また第5条では、「基本的人権の尊重」として、「憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない」とか、「国民の自由と権利に制限が加えられるときでも、その制限は必要最小限のものに限られ、公正かつ適正な手続の下に行われるもの」とし、「差別的に取り扱い、思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵すものであってはならない。」と結ぶ。

 完璧なほどの「国民の保護」条文ではあるが、そこに「袈裟の中の鎧」が見え隠れする。つまり、前段が建前の袈裟であり、後段の「自由と権利に制限が加えられるとき」が鎧である。「自由と権利」をうたいながら、「制限」をするときには、「国民の保護のため」「必要最小限」に限られる、とするこの論法は、いつか来た道のそれであり、さる大戦での戦争動員でも使われたし、現在でも国家権力が国民を欺くときの常套手段であることに注意したい。

   さらに、「公共的団体」が協力者として新しく登場することにも目を向けるべきだが、「公共的団体」が都道府県や市町村において、どのような団体、どの範囲までの団体を指すのかはっきりしない部分がある。

 ちなみに、消防関連の自主防災組織の組織率はすでに60%台である(消防白書)。今後地域の幹部たちを中心にその組織化が進められ、「防衛のための」訓練組織として変質されていくことになる。

                                                                                       詳細は「動きだした自治体」参照

第6条 国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償、国民の保護のための措置に係る不服申立て又は訴訟その他の国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。

(2)戦後補償さえまだ未解決

 第6条までが、国民の権利擁護の条文で、損失補償、不服申立て、訴訟、その他四項目を掲げている。しかし、戦争状況のなかでのこのような条文が履行される保証はどこにもない。「できる限り迅速に処理」というのは言葉遊びの感が強い。

 また、このような措置は戦前の「国家総動員法」においても謳われていたものであるが、戦争の嵐の中で完全に無視された。それどころか、損失補償や不服申立て、訴訟を行った者に対する「非国民」扱いの証言は多い。

   戦後補償の「国債」や「郵便貯金」等でも、貨幣価値などを全く無視して行われた記憶はまだ新しい。戦争状況後の貨幣価値や経済的状況の変動等によって、平和時に作られるこのような条文をほとんどその意味を持たなくさせるのが「戦争」というものであることを肝の銘じたい。

                                                                                                  参照 「沖縄戦では」

4 国民保護の具体的措置(全般)

「避難・救援」から何が見える たとえばこうなる これだけある疑問と質問
「とりあえず三割救出でも」 意識改革として機能する「国民保護法」 「非国民」の再来か
「国民保護法」における罰則及び強制収用 対策本部の設置と権限 「国民保護協議会」とは
避難、誘導 救援関連 安否情報の収集

 第3条に基づく「国」「都道府県・市町村」「指定行政機関」「指定公共機関」の責務及び措置を整理したのが次表である。国・地方自治体がそれぞれどのような関係でつながり、有事においてどのような「保護措置」(警報の発令→避難→救難→避難生活まで)と呼ばれる行政行為をするかを整理したものである。

   基本原則は「責務」で明らかなように、国家(指定行政機関・指定公共機関)→都道府県(指定地方行政機関・指定地方公共機関)→市町村(指定地方行政機関・指定地方公共機関)への「上意下達」の系統が確立したことである。

   国民はこの措置を受けるのだが、この措置が戦闘を含む戦争状況で行われた時、どのような状況に置かれるかを住民の立場から「避難」と「救援」とそれに関連することについて絞り想定してみることにする。

(1)「避難・救援」から何が見える

国・都道府県・市町村が行うこと

国(政府・対策本部) 都道府県 市町村



「基本指針」を作成 国の「基本指針」に基づき「国民保護計画」を作成
あらかじめ、総務大臣を経由して内閣総理大臣に協議 あらかじめ、都道府県知事に協議
指定行政機関や都道府県、他市町村の国民保護計画との整合性確保
指定行政機関や他都道府県の国民保護計画との整合性確保
議会に報告する
公表する 公表する






















基本的な方針 総合的な推進事項 総合的な推進事項
都道府県の保護計画基準 指定地方公共機関の業務計画基準作成 警報を受ける 警報の伝達
地方自治体対策本部設置方針 市町村の保護計画作成基準 避難実施要領の策定
指定行政機関の保護計画基準 警報の通知 市町村 関係機関の調整
公共機関の業務計画基準 他の執行機関 その他
武力攻撃事態の想定事項 指定地方公共機関 警報の伝達 住民
緊急対処保護に関する必要事項 他関係機関 関係団体
公表 武力攻撃 避難指示(市町村を通して) 要避難地・避難先 他執行機関
災害状況 避難経路・交通手段 関係機関
避難救援、他 避難方法 サイレン、防災無線、その他
警報の発令 武力攻撃事態の現状と予測 講ずべき措置 避難実施要領 避難経路
避難誘導(支援) 避難手段
該当地域 区域外への避難 避難誘導の方法
周知すべき事項 その他 職員配置
警報の通知 指定行政機関 避難通知 市町村 必要事項
都道府県 他の執行機関 伝達 住民、関係団体
避難の指示 要避難地 指定公共機関 通知 他執行機関
避難先地 避難先施設管理者 消防長(消防団長)
講ずべき措置 救援の指示を受ける 警察署長
その他 救援の実施 収容施設の供与 海上保安部長
食品の給与 自衛隊の部隊
飲料水の供給 関係機関
避難の通知 指定行政機関 生活必需品の給与・貸与 避難誘導 指揮 職員
消防長(消防団長)
都道府県 医療の提供・助産 食品の給与
被災者の捜索・救出 飲料水の供給
救援の指示 埋葬・火葬 医療の提供、その他
応援の指示 通信設備の提供 救援の実施 救援の実施
安否情報の収集と提供 安否情報の収集と提供 安否情報の収集と提供
武力攻撃災害の措置 都道府県知事への指示 その他 都道府県が行う救援の補助
武力攻撃災害への対処 災害の防除と軽減 その他
関係大臣を指揮し措置 緊急通報の発令 武力攻撃災害の防除・軽減のための対処
退避の指示 避難生活 退避の指示
生活関連等施設の安全確保 警戒区域の設定 警戒区域の設定
危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止 保健衛生の確保 食料の提供
生活関連等施設の安全処置 医療の提供
放射性物質等による汚染の拡大を防止 消防
被災情報の収集 廃棄物の処理
生活関連物資の価格の安定等 その他 被災情報の収集
武力攻撃災害の復旧に関する措置 避難生活 生活物資等の価格安定等 水の安定的供給
その他
地方公共団体相互の連携協力 その他 武力攻撃災害の復旧
関係機関相互の連携協力 武力攻撃災害の復旧 訓練
その他 訓練 体制づくり
* 体制づくり 物資と資材の備蓄
物資と資材の備蓄 必要事項
必要事項 他市町村・関係機関との連携
市町村事務の代行 避難指示の解除時の必要な措置
他都道府県等との調整・協力 自衛隊の派遣要請を求める
他都道府県等との連携 関係機関と調整する
他都道府県等に応援を求める 運送事業者に避難住民の運送を求める
自衛隊の派遣を要請する 警察官、海上保安官、自衛官の避難誘導を要請する
日本赤十字社に救援を委託する
運送事業者に 住民の運送を求める 都道府県知事等に対し、要請する
緊急物資の運送を求める 他の市町村等に対し、応援を求める
※各種の強制収用 他の都道府県等に対し、応援を求める

指定(地方)行政機関・指定(地方)公共機関が行うこと

指定行政機関指定地方行政機関 指定公共機関・指定地方公共機関




「国民保護計画」の作成 「国民保護業務計画」の作成
「国の基本指針」に基づき作成 「国の基本指針」(地方機関は都道府県計画)に基づき作成
あらかじめ、内閣総理大臣に協議する 関係指定行政機関の意見を聴く 内閣総理大臣は助言
地方機関は都道府県知事が助言
都道府県知事、指定公共機関に通知する 指定行政機関を経由して内閣総理大臣に報告
公表する 指定地方公共機関は都道府県知事に報告
都道府県知事・市町村長に通知する
公表する












措置の内容と実施方法 保護措置の内容と実施方法
実施のための体制 実施のための体制
関係機関との連携 関係機関との連携
必要事項 必要事項
警報伝達 指定地方行政機関 学校 労務、施設、設備、物資の確保の応援を求める
指定公共機関 病院 組織の整備 職員の配置
他関係機関 駅・その他 服務の基準を定める
避難通知 指定地方行政機関 応急復旧に支援を求める
指定公共機関 適任職員を派遣する
訓練 緊急対処保護措置に関する相互連携協力
組織整備 職員の配置 緊急対処保護措置の必要事項
服務の基準を定める 安全の確保
物資の供給その他支援を行う 放送 警報内容の放送
生活関連等施設の安全確保の要請を行う 避難内容の放送
危険物質等 武力攻撃災害発生の防止 緊急通報の放送
取扱所の警備の強化を求める 運送事業者 避難住民の運送
武力攻撃災害発生の防除と軽減 緊急物資の運送
運送事業者に緊急物資の運送を求める 旅客・貨物運送の確保
武力攻撃災害の発生と拡大を防止する 電気通信事業者 電話等の通信設備の設置の協力
被災情報 収集・報告 電気の安定的適切な供給
指定地方行政機関→指定行政機関 通信の確保と優先的取り扱い
指定行政機関→対策本部長 ガス事業者 ガスの安定的適切な供給
「物価統制令」その他法令に基づく措置 郵政公社 郵便・信書便の確保
物資・資材の備蓄、整備、点検 信書便事業 信書便の確保
施設・設備の整備、点検 医療機関 医療の確保
武力攻撃災害の復旧 河川施設管理者 適切な管理
安全の確保 道路管理者 適切な管理
緊急対処事態対策本部の所掌事務等 港湾管理者 適切な管理
空港管理者 適切な管理
災害研究業務 指導、助言、その他援助する

(2)例えばこうなる?

◇全体の流れ@避難(警報の発令→警報の通知→避難の指示→避難誘導)
 国が「武力攻撃事態」を認定→「警報」発令→放送局が警報放送・都道府県知事が避難地(避難元・避難先)の指定と避難を各市町村長に指示→地元の放送局が警報及び避難を放送→避難元住民に避難地の指定と避難の誘導→住民が避難地に避難→避難先市町村長が受け入れ体制を発足、救援活動の指示→その他

◇全体の流れA救援(救援→避難生活→復旧)
救援物資(食糧等)の避難地への輸送→救援物資(食糧等)の提供・医療の提供→避難住民の安否情報の収集と提供→その他

◇全体の流れB武力攻撃災害(火災・水害・建物の倒壊等)への対処
都道府県知事の武力攻撃災害への対処と市町村長への要請→市町村長の応急対処→その他

◇全体の流れC公安委員会・警察による各種規制
輸送路確保のため交通規制→警察官の車両運転手への指示及び措置→その他

◇全体の流れC避難生活の継続(?)

(3)これだけある疑問・質問

[警報発令]

@何がどのように起こった時、「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」と認定するのか?
A「警報」は、「戦争行為」のどのような状況やどの段階で発令されるのか?

[避難]

@ 避難先地は、前もって指定しなければならないが、「戦争行為」の状況とどう係わるのか。
A数万人または数十万人(時には数百万人)規模の避難場所はどこに作られるのか。
B「避難地」(避難元・避難先)は、「戦争状況」によって場所は変化せざるをえないが…。
C避難先地での収容施設は誰が何時作るのか。
DCは@との整合性はとれるのか。仮に避難後の設置なら戦争状況下でそれが可能か。
E「武力攻撃事態」に入れば、自衛隊(「自衛隊法第76条」)およびアメリカ軍(「武力攻撃事態等法案第22条2、3」)は出動しているはずだが、「避難地」(避難元・避難先)と自衛隊およびアメリカ軍の「作戦範囲」との関係はどうなるのか。   
F国民の避難誘導は市町村長の役割だが、それを実際に誘導するのは誰か。警察、消防、自衛隊も支援体制に組み込まれているが、この機関は別項の任務(「戦争行為」「戦争被害」)についているのではないか。
G予想されるのは市町村職員を中核とした、末端行政区単位に「避難組織」(自主防災組織)が組織化され動員される可能性が強い。

[救援]

@「救援」の救援物資の運搬は運送業者に義務づけられているが、事前の輸送はあり得ないが(避難-@)との整合性でどうなるのか。
A警報発令後の輸送となれば、道路は避難民の輸送・移動や自衛隊その他の出動で混雑、あるいは、規制されているが…。
B避難完了後なら、戦争状況と重なる場合があって輸送は可能か。
C医療施設の確保は、避難地と連動しているべきものだが、「戦争行為」の状況と「警報発令」との係わりはどうなるのか。

[戦争被害対策]

@「戦争被害」(火災・水害・建物の崩壊等)に実際に対処するのは消防だけか。対処に必要な設備・機器等はだれがどうするのか。
A「応急処置」とは誰が何をすることなのか。
B避難警報が発令され、交通が規制されている「戦争行為」の状況下で、「戦争被害」に対処することが可能か。  

[人]

@避難地での安否情報の収集や提供は、実際には誰がどのようにするのか。
A自衛隊など一部の人間が「戦争行為」に対処するようだが、その他の多くの人たち(一般住民)は避難場所にいるのか。
B自衛隊や警察官、海上保安庁などの職員が避難場所に派遣されることになっているが、自衛隊などは「戦争行為・戦闘行為」に専念しているのではないか。
C家族が同じ避難場所にいない時はどうなるのか。探しに行けるのか。
(以下略)      
                                                                                         沖縄戦では

 現在、地方公共団体等が「国民保護計画」(33〜36条)の受け皿−警報発令から避難誘導、救援、避難生活等に関わるマニュアルを作成中である。T県の試作では克服すべき法整備だけでも数十はあるという。総動員体制の近代戦争であってみれば当然だが、複雑化した現代社会では手のつけようもないのが事実であろう。

                                                                                         詳細は「動きだした自治体」参照
(4)「とりあえず三割救出でも」

 政府が参考にした「災害対策基本法」の指揮権は都道府県知事にあり、その発動は都道府県の一つまたは隣県にまたがるものでしかない。「国民保護法」は指揮権を国家が握り、自治体等に発動しょうとするからこのような矛盾が生じる。その矛盾の克服に苦慮している姿をT県の例で見ることができる。

 たとえば、避難元と避難先の指定(52条)でも自然災害時と戦争時では本質的に異なるし、緊急物資の輸送(79条)や救援の実施(75条)にしても同様である。さらに「武力攻撃災害」が「武力攻撃事態」における災害とすれば、「消火」や「水害対処」「倒壊建物への対処」等は成立するはずがない。しかも、自主的な「防災組織」を呼びかけている(第4条)が、どのような状況を想定してこのような条項を入れたのか理解に苦しむ。まさか、60年前における「隣組」の「バケツリレー」や「学徒動員」で行った「建物疎開」を想定しているわけでもなかろう。その時でさえ「何の役にも立たなかった」という証言が圧倒的に多い。現在では、通常の火災でも、燃えるもの(燃焼物や建材等)や燃えているもの(高層建物等)からしても想像に絶する。

 沖縄戦の教訓でも明らかなように、また、現在進行中のアメリカのイラク攻撃による市民の避難においても同様であるが、戦場では、軍隊なら通用する指揮系統は成立しないのが常識である。人間は、生死の境を断ち切る戦争状況では、己の意思で行動するしかない。仮に、指揮系統によって行動する国民を想定しているのなら、それは人間を知らないものの無知である。

 戦争は常に具体的事実である。戦争を一般化して避難の対策を立てることは不可能である。内閣官房の某氏も、この有事は二百年、三百年先の外敵の可能性を前提としつつ「武力攻撃への対処は百点満点がとれない。…有事に備えて、今は三十点でも…」と地方自治体にその努力を説いている。しかし、真剣に戦争を考えた人間なら、それを想定して国民を守るという対策は作れない。

   国民の命と安全を考える政府や自治体なら戦争をどう防ぐのかを考えるものである。このような名目だけの「国民保護」のために時間と金とエネルギーを使うことは、戦争を起こさない外交に振り向けられるべきである。それでも、国家がそのような国際情勢(現実でない他国の侵略)とそのような国民保護(とりあえず十名のうち三名救えば良い)の認識で、「有事法制」を急ぐのであれば、それは、国家一丸となった戦争計画への第一歩である、と断定できよう。そして、国家権力がそのために、国民をどのように改造していこうとしているのか、にその焦点があてられなければならない。

(5)意識改革として機能する「国民保護法」

 一つ目は、国民の「危機意識」の転換を狙いながら、国民の意識改革を始めたと見る。現在の日本人を国家規模で束ねるには誰もが持っている「危機意識」を使うのが功利的だろう。かつて、日本の朝鮮支配の理由の一つに「半島の不安定即帝国安寧の危機」という国家的喧伝があった。この方法は、その後日本の対外(侵略)戦争の度に国民的合意を取り込むために利用された。今政府は、国民の危機意識を「個人偏重」だと批判し、「社会的(国家的)」に転換させることが重要である、と説く。「国民保護法」はそのために機能するだろうが、自治体の計画作成に現地の自衛隊を積極的に関わらせているのもその一つである。

 たとえば、T県の「教育訓練」のプログラムに、地元自衛隊による「戦術的思考」という講義と演習があり、与えられた条件下でいかに戦い抜くか(軍隊的思考)の思考訓練が行われている。これまで行われてきた企業による自衛隊体験教育から一歩踏み込んで、自治体そして学校教育にまで公然と入り込む布石となろう。

 二つ目は、国家による自治体との矛盾の相剋である。地方自治体は憲法92条で規定された「地方自治の本旨」(地域のことは地域を納める団体が他の干渉を受けずに住民の意思に基づいて自主的に処理すること。)に基づく団体であり、当然のように現行の地方自治の法制はその精神に基づいて成り立っている。したがって、国とも対等な存在であるべき地方自治体を国家の指揮権の中に全面的に組み込もうとすれば法制上矛盾が生じるのは当然である。今後、地方自治体がその矛盾をどう乗り越えていくかが大きな問題となるが、国家と地方自治体(公共機関も)の調整の過程で、関連法の改悪が浮上してくることは否定できない。つまり、「有事」という架空の国家的危機を背景に、「地方自治の本旨」を有耶無耶にすることによって矛盾を乗り越えようするであろう。その意味で有事法制の真の問題はこれから先に大きく横たわっているのである。

(6)「非国民」の再来か ?

 三つ目は、国民の国家への奉仕精神の育成である。「国民保護法」には「国民は、協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努力する」(4条)とある。「輪郭」では、「権利及び義務に関する措置(強制力を伴う)」とあった。しかし、今回の法によって、表現上「権利及び義務」が姿を消して「協力」が残った。それは、現在の憲法上、基本的人権の保障からの結果である。政府の自治体への説明も「強制はできない」という見解をとっている。しかし、それは法律上の体裁を繕っただけにすぎないことは次のことからも理解される。

 他の条文では、国は「国民の理解を深めるため、国民に対する啓発に努めなければならない。」(43条)とあり、指定行政機関、地方自治体、指定公共機関はこぞって「組織整備」をし(41条)、「自主防災組織及びボランティアにより行われる…自発的な活動に対し、必要な支援」(4条)と「訓練」(34条、35条、42条)をしければならない、と規定されている。

 まさしく、現在行われている「防災訓練」と同じ感覚である。しかし、これは「避難訓練」とはいえ、紛れもなく「戦争協力訓練」である。区域を指定し、道路を封鎖(42条)して、戦争になったらどう避難するのか、という意識と行動の訓練である。

 去る戦争でも「消火訓練」「防火訓練」「退避訓練」「御真影避難訓練」「竹槍訓練」等があったが、「訓練」というのは、「訓練」そのものによって身につく行動様式ももちろん重要な意味を持つが、もっと重要なことは、単純な行動の繰り返しの中で徐々に養われる意識の変化である。「体でおぼえる」という古くから行われている「訓練」による精神的な変容がその目的となる。

   「地方公共団体の長は、訓練を行うときは、住民に対し、訓練への参加について協力を要請することができる。」という条文は、住民の賛同をえて実施されるような文言ではあるが、実際はそのようなことにはならない。なぜなら、このような体制が整備された中で、国家の指揮権が市町村長の国民への「協力要請」に機能したとき、市町村長=国家となるからその権限は大きい。つまり、「有事」における市町村長の協力要請には「イエス」しかない、という仕組みが見えてくる。

   政府は、協力事項だという見解をとっているが、「有事」になればそんな見解は吹っ飛んでしまうことは明らかである。そして、状況によっては「非協力者」に対して、戦前、国民を暗黒のどん底に陥れた「非国民」というレッテルを張ることになるのである。自然災害とは異なる国家施策の末端での「協力要請」では権力の影がうごめくことは日本人がもっともよく知っていることである。そこにこの類の法制の恐ろしさが潜んでいる。日本人の意識と行動を知り尽くしたものの仕掛けであることは否定できない。

 法的な整備からしても、「なぜ責務と書けないか」(与党内協議)や「法律は本来権利を制限して義務を課するもの」(内閣官房参事官)という認識が、今後「協力」を「責務」や「義務」に改悪していくことは十分に予想される。しかも、「有事法制」を構成する各種法律に顔を出す「罰則」が国民に睨みをきかす。

   次の表以外にも「自衛隊法」(民間罰則条項が登場)「米軍支援法」「特定公共施設等利用法」がある。問題は、ここに記載されていることだけではないということである。
                                                                             →沖縄戦では

(7)「国民保護法」における罰則及び強制収用

一般対象の罰則 その他の罰則 強制力を伴う使用・収用

一般対象の罰則(188条〜194条)

命令者・執行者 対象者 内容 罰則
第189条  都道府県知事 生産業者
集荷業者
販売業者
配給業者
保管業者
輸送業者
特定物資 保管命令違反 6月以下の懲役
30万円以下の罰金
指定行政機関の長
指定地方行政機関の長
隠匿(隠す)
損壊(壊す)
廃棄(捨てる)
搬出(持ち出す)
第190条  都道府県公安委員会 運転者 区域を制限
道路を制限
立入り制限違反
立入り禁止違反
3月以下の懲役
30万円以下の罰金
警察官
自衛官
消防吏員
第192条  都道府県知事 指定行政機関の長 指定地方行政機関の長 所有者
管理者
生産業者
集荷業者
販売業者
配給業者
保管業者
輸送業者
土地の使用 立入り検査拒否
立入り検査妨害
30万円以下の罰金
家屋の使用
特定物資の保管
物資の所在する場所
取扱い物資の保管 報告拒否
虚偽の報告
立入り検査拒否
立入り検査妨害
立入り検査忌避
第193条  都道府県公安委員会 一般国民 立入り制限区域 立入り制限違反
立入り禁止違反
退去命令違反
30万円以下の罰金
拘留
警察官
海上保安官
市町村長 警戒区域
都道府県知事
警察官
海上保安官
自衛官

その他の罰則

第188条 (危険物質)等に関する管理命令違反
第191条 (核物質・核燃料)等に関する管理命令違反
第194条 (放射性物質)等による汚染の拡大の防止違反
※「特定物資」-救援の実施に必要な物資(医薬品、食品、寝具その他政令で定める物資)のうち生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送を業とする者が取り扱う物資のこと。

強制力を伴う使用・収用

命令者・執行者 対象 内容
第81条 都道府県知事 所有者
占有者
特定物資 ・売渡し
・要請
・要請を拒む時
・必要なとき
強制収用
指定行政機関の長
指定地方行政機関の長
第82条 都道府県知事 土地 使用する ・不同意
・所在不明
強制使用
家屋
物資
第113条 市町村長
都道府県知事
警察官
海上保安官
自衛官
土地 使用する *
建物
他の工作物
土石 ・使用する
・収用する
竹木
その他
工作物 除去する
他の物件 その他
第85条 都道府県知事 医師 医療行為 要請する 応じない 指示する
看護師
その他

  罰則規定の持つ意味

   このような「罰則規定」や「収用規定」にはかならず、「必要があると認めるとき」「に限り」などという限定条件が前置きされる。そのことによって法解釈の暴走を抑えることになるが、逆に言えば、解釈によってどこまで運用されるのか、ということにもつながり、結局、権力の法執行は、自らにとって最大限の解釈をするのが常套である。この表もそのような観点から整理してある。つまりできない方向での限定された解釈ではなく、ここまでできるのだ、ということである。なぜなら、法は最終的には条文の内容を運用するために制定されるものであるからだ。

   たとえば、第82条について、都道府県知事が武力攻撃災害の事態において、当該土地を使用しょうとするときの「強制使用」は、所有者または占有者が正当でない理由による不同意または所在不明の場合に限定される。この時、知事は、たとえば所有者が不同意であっても、占有者が「所在不明」であれば、後者の理由によって「強制使用」を進めるであろうし、また、不同意の理由が正当であっても正当でないと判断することも可能であり、大抵は後者によって「強制使用」を進めることになる。

 このように考えると、たとえば、「特定物資」を例にとってみた場合、「救難」と言う名目で、物資の所有者に対して「売り渡し」が要請されるが、「必要な場合は」本人の意思とは無関係の「強制収用」がなされる。

   解釈次第で罰則 

 一方、当該物資の生産業者、集荷業者、販売業者、配給業者、保管業者、輸送業者(つまり、当該物資のすべての関係者)の各段階にたいしては 、「特定物資」に「保管」命令が出され、そのために職員が派遣され、保管されている物資そのもの、その場所、保管状況の検査のために立ち入ることになる。その場合、それぞれの業者の段階で、たとえば、「プライバシー」に関わる事柄等によって「立入り」や「検査」を拒んだり、保管状況の報告のなかの数量を都合によって若干私用にした分減らしたり、腐りかけた物資を早めに処分したり、…などによって、「6月以下の懲役または30万円以下の罰金」となりかねないのである。

 また、第113条における「強制収用」には「罰則規定」もないが限定条件もない。村役場から「緊急」事態を理由にこの庭を含む一角を使用する、旨の通知が届き、まもなくその執行に入る。所有者は、庭の植木や大切な庭石の移動に2、3日待ってくれと言うが「緊急」を名目に強制執行が始まった。しかも、この庭石も使用すると言う。こういう状況は証言によれば、沖縄戦の時にはどこでもみられるものである。

                                                                                                        「沖縄戦では」

 以上のように、これら物資に関して言えば、物がある段階では「強制収用」をし、それができない段階では「罰則」によって処分しようとしている。いずれにしても、寸分の抜け道もない物資の調達のしくみではある。日本人の微細な感覚(意識)がなせる業ではある。

 ここでいう「特定物資」とは、第81条において「医薬品、食品、寝具その他政令で定める物資」と規定されているが、「医薬品、食品、寝具」以外の「その他政令で定める物資」は今のところ不明である。「医薬品、食品、寝具」以外の考えられる物品というのは要するに日用品ということになることは大方予想されるが、それらの物資が生活必需品であるだけに問題は大きいといわなければならない。なお、「国家総動員法」では、総動員物資という名称で規定されていた。

(8)対策本部の設置と権限(第27条〜第29条)

◇国=対策本部  ◇都道府県=都道府県対策本部  ◇市町村=市町村対策本部

各対策本部の関連図
対策本の関係
                                            

構成メンバー

都道府県 市 町 村
本部長 内閣総理大臣 知事 市町村長
副本部長 国務大臣から任命 本部員から知事が指名 本部員から市町村長が指名
本部員 すべての国務大臣 ・副知事
・教育長
・警察本部長
・特別区の消防長
・職員から任命する者
・助役
・教育長
・消防長又はその指名する消防吏員(消防団長)
・職員から任命する者
必要がある時 * ・国の職員
・職員以外の者を会議に出席させることができる。
求めがあった場合 * 防衛庁長官は、その指定する職員を会議に出席させる
その他の職員 内閣官房の職員、指定行政機関の長、その他の職員または関係する指定地方行政機関の長その他の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。 * *

(9)「国民保護協議会」(第37条〜第40条)

  都道府県(37条)、市町村(39条)にそれぞれ「国民保護協議会」が置かれることになるが、「知事(市町村長)の諮問に応じて重要事項を審議する。」「重要事項に関し、知事(市町村長)に意見を述べる。」「国民の保護に関する計画を作成し、又は変更するときは、あらかじめ、協議会に諮問しなければならない」となっており、行政の監視機関となっている。

   その構成メンバーには、都道府県では、「陸上自衛隊」「海上自衛隊」「航空自衛隊」のそれぞれから知事の任命を受けて入ることになり、市町村でも「防衛庁長官の同意を得た自衛隊に所属する者」から任命されて入ることになっている。事態の生じた後で組織される「対策本部」にも自衛隊員が入るが、「国民保護協議会」は有事に備えた組織である。そのことがどのような意味を持つのかは別項で述べる。

                                                                                                   参照「自衛隊の先導性について」

 これらのメンバーは知事や市町村長の任命の選択肢の一つではあるが、国民保護法におけるこれまでの都道府県段階の自衛隊ベッタリの取り組みをみると、任命されないという可能性は極めて低いとみるべきである。また、都道府県と市町村においてそれぞれの「教育長」が入っているが児童生徒を含めた学校教育を組み込むための布石と言えよう。                                                                      
構成メンバー

都 道 府 県 市 町 村
会長 知事 市町村長
委員(右の者から知事が任命) 副知事 助役区域を管轄する指定地方行政機関の職員
教育委員会の教育長 教育委員会の教育長
警視総監又は道府県警察本部長 当該市町村の職員
当該都道府県の職員 当該市町村の属する都道府県の職員
区域内の市町村長 区域を管轄する消防長又はその指名する消防吏員(消防団長)
区域を管轄する消防長
区域内の指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員 区域の指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員
指定地方行政機関の長又はその指名する職員 自衛隊に所属する者(防衛庁長官の同意を得た者)
防衛庁長官が指定する陸上自衛隊に所属する者 知識又は経験を有する者
防衛庁長官が指定する海上自衛隊に所属する者
防衛庁長官が指定する航空自衛隊に所属する者
知識又は経験を有する者
特別区の消防長
専門委員を置くことができる(右の者から知事が任命) 区域内の市町村の職員 当該都道府県の職員
関係指定公共機関又は指定地方公共機関の職員 区域内の市町村の職員
専門的な知識又は経験を有する者 関係指定公共機関又は指定地方公共機関の職員
専門的な知識又は経験を有する者

  末端は町内会から学校まで

 条文では「都道府県」「市町村」段階での法制化となっているが、現在の日本の各種組織・団体の組織系列やその運営を見るまでもなく、この「保護協議会」も実施運営の段階ではさらに下部組織として、各市町村段階において「町内会、区会、字会」における「協議会支部」なるものが押しつけられてくることはあきらかである。もちろん、学校、職場においても同様であろう。

 これは戦前、在郷軍人が介入し、「大政翼賛会(のち義勇報国会)」の指導の対象とされた「部落会町内会等」(1940年9月11日)の歴史を引き継いでいると思われるが、現職の自衛官が構成員となることによって、すでに戦前のそれを超えることになる。これはまさしく「大政翼賛体制」の生まれ変わりであると言えよう。
   去る大戦では「翼賛政治」の中核を担って、戦争遂行の強力な一大組織となっていたが、沖縄戦では、その幹部が県首脳を越えて指示を出していたのも事実である。 

                                                                                                                参照 「部落会町内会

(10)避難・誘導関連(第44条〜第73条)

   警報が発令されて避難誘導までの系統は次の三段階が想定されている。警報すなわち避難ではなく、警報の発令後、避難の必要性があった時避難の指示が出される。避難は、指示と通知を区分けしているがここでは触れない。指示が出た後、「避難誘導」がなされる。

   これでもわかるように、有事のおける具体的な避難誘導は行政の末端組織である市町村がその任務を遂行することになる。ここでは組織の伝達・指示・通知等の系統のみを記載したが、何をどうするのかは、「国民保護の具体的措置」の項を参照してほしい。

警報の発令と伝達(濃い色が基本ライン)

対策本部長
総務大臣 都道府県知事 市町村長 住民
他の執行機関 * 関係団体
他執行機関
関係機関
指定地方公共機関
関係機関
学校管理者
病院管理者
駅管理者
その他
指定行政機関
指定行政機関 指定地方行政機関
指定公共機関 *
関係機関 *
外務大臣 外国滞在邦人 指定公共機関(放送事業者) 放送
国土交通大臣 航空機内在者 指定地方公共機関(放送事業者)
海上保安庁長官 船舶内在者 *

避難措置の指示と通知(濃い色が基本ライン)

対策本部長 総務大臣 都道府県知事 市町村長 住民
他の執行機関
関係指定公共機関
指定地方公共機関
避難施設管理者
上記以外の知事 * *
指定行政機関 指定地方行政機関
指定公共機関
外務大臣 外国滞在邦人
国土交通大臣 航空機内在者 指定公共機関(放送事業者)
指定地方公共機関(放送事業者)
放送
海上保安庁長官 船舶内在者

避難誘導(濃い色が基本ライン)

市町村長 住民
関係団体
「避難実施要領」 伝達する
他の執行機関
消防長
海上保安部長
警察署長
自衛隊の部隊
関係機関
通知する
職員
消防長
消防団長
指揮 避難誘導する
警察署長
海上保安部長
自衛隊の部隊
避難誘導 要請する
指定地方公共機関(運送業) 住民の運送 求める
都道府県知事 警視総監
道府県警察本部長
海上保安本部長
自衛隊
避難誘導 要請する
指定公共機関(運送業) 住民の運送 求める

(11)救援(第74 条〜第93 条)
  
  避難誘導された住民に対しては当然のように食料や飲料水、寝具などが支給されて「避難生活」が始まるが、この段階では、次の表を見ても分かるように都道府県の責任が大きくなる。

都道府県知事の救援内容

@(第75条)基本的な救援内容
○収容施設の供与、 炊き出し等による食品の給与、飲料水の供給、 被服・寝具その他生活必需品の給与または貸与、医療の提供、助産、被災者の捜索または救出、埋葬や火葬、電話その他の通信設備の提供、その他政令で定めるもの。
※金銭支給で代替する場合。
A(第76)条市町村長への事務一部負担委譲
○市町村長は、都道府県知事が行う救援を補助する。
B(第77)日本赤十字社への委託
○日本赤十字社は、都道府県知事が行う救援に協力。
○都道府県知事は、救援又はその応援の実施に関し必要な事項を日本赤十字社に委託する。
C(第78・79)関連公共機関・事業者への協力または指示等
◇電気通信事業者→電話等通信設備の設置
◇運送事業者→運送の協力
◇医師・看護師・医療関係者→医療の要請
※要請に応じない→指示。(「国民保護法」における罰則及び強制収用を参照)
D(第80)避難住民への協力
○避難住民等及びその近隣の者に対し、協力を要請する。
E(第81)救援の実施に必要な物資(医薬品、食品、寝具、その他)の売渡し要請
→生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送する者が取り扱うもの(「特定物資」)
※要請に応じない→収用。(「国民保護法」における罰則及び強制収用を参照)
F(第81)特定物資の保管命令
→生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送する者
※指定行政機関の長や指定地方行政機関の長→自ら措置を行うことができる。
※(「国民保護法」における罰則及び強制収用を参照)
G(第82)土地、家屋又は物資の使用及び立ち入り・検査
※正当な理由がないのに同意をしない又は所在不明である場合、同意を得ないで使用できる。
※詳細は「罰則・強制力をともなう使用収用等」

(12)安否情報の収集(第94条〜第96条)

○市町村長は、死亡し又は負傷した住民の安否に関する情報(「安否情報」)を収集し、及び整理するよう努めるとともに、都道府県知事に対し、報告しなければならない。
○都道府県知事は、同様に、総務大臣に対し、報告しなければならない。
○安否情報を保有する関係機関は、協力する。
○総務大臣及び地方公共団体の長は、安否情報について照会があったときは、回答しなければならない。
○日本赤十字社は、外国人に関するものを収集整理し、照会があったときは、速やかに回答しなければならない。

5 国民保護法の武力攻撃災害への対処

対処方法 通報体制(緊急通報を含む) 緊急通報の発令・通知 生活関連施設の安全確保処置
応急処置に対する措置 事前措置と退避 応急公用負担等 被災情報の収集等

(1)対処方法(第97条)

地方公共団体と協力 武力攻撃災害への対処に関する措置を実施
対策本部長 都道府県知事に 武力攻撃災害への対処に関する措置を指示
内閣総理大臣 関係大臣を指揮 必要な措置を講じる
都道府県知事・市町村長 必要な措置を講じる
都道府県知事 困難なとき 国に要請する
市町村長 都道府県知事に対し国への要請を求める
消防 武力攻撃災害の防除と軽減

(2)通報体制(緊急通報を含む)(第98条)

発見者 市町村長 都道府県知事 区域内の市町村長
消防吏員 市町村長 他の執行機関
警察官 指定公共機関
海上保安官 指定地方公共機関

(3)緊急通報の発令・通知(第99条〜第101条)

緊急通報の発令 緊急通報の内容 緊急通報の通知 緊急通報の放送
都道府県知事 武力攻撃災害の現状
武力攻撃災害の予測
その他
周知させるべき事項
区域内の市町村長 指定公共機関
(放送事業者)
他の執行機関
指定公共機関
指定地方公共機関
対策本部長

(4)生活関連施設の安全確保処置(第102条)

命令者・執行者 対    象(者) 内        容
都道府県 生活関連等施設管理者 必要な措置 要請する
自ら管理する生活関連等施設 警備の強化 行う
市町村 その他必要な措置
指定行政機関
指定地方行政機関
都道府県知事 要請を行う
市町村長
自ら管理する生活関連等施設 警備の強化 行う
その他必要な措置
生活関連等施設管理者 都道府県
警察
消防機関
その他行政機関
支援を 求める
指定行政機関
指定地方行政機関
都道府県・市町村
都道府県公安委員会
海上保安部長等
立入制限区域(海上・陸上) 範囲 指定する
公示する
期間
その他
警察官
海上保安官
立入り制限
立入り禁止
退去命令
執行する
内閣総理大臣 関係大臣 必要な措置 講じさせる
国家公安委員会 都道府県公安委員会 立入制限区域の指定 指示する

(5)応急処置に対する措置

危険物質の対する措置(第103条〜第108条)

命令者・執行者 対象者 内                 容
指定行政機関
指定地方行政機関
都道府県知事
市町村長
占有者
所有者
管理者
その他
警備の強化を求める
報告を求める
取扱所全部の一時停止または使用制限
取扱所一部使用の一時停止または制限
製造、引渡し、貯蔵、移動、運搬、消費の一時禁止
製造、引渡し、貯蔵、移動、運搬、消費の制限
所在場所の変更又はその廃棄

※危険物質等とは…引火、爆発、空中飛散、周辺地域への流出により生命、身体、財産に対する危険が生ずるおそれがある物質(生物を含む。)で政令で定めるもの。
※以下、(石油コンビナート等)(原子力)(原子炉等(放射性物質等))への対処等があるが、上記(危険物質等)との対処と大差ないのでここでは省略する。

 それにしても、核物質関係だけでもこのような膨大な法的規制(6箇条26項)がしかれないと戦争ができないということの恐ろしさの方が逆に再認識させられたことである。

(6) 事前措置と退避(第111条、第112条)

   「事前措置」というのは、条文によれば、「武力攻撃災害が発生するおそれ」の段階で、実際に「武力攻撃災害が発生した場合」には災害が拡大するあそれがあると判断されたことがらについて、何らかの予防的な措置をするということである。物に対しては「撤去」などを指示し、人に対しては「退避」を指示する。

命令者・執行者 対象者 内容
市町村長
都道府県知事
警察署長 占有者
所有者
管理者
武力攻撃災害の拡大のおそれがある設備又は物件の除去、保安、その他の措置 指示する
海上保安部長等
市町村長
都道府県知事
警察官 住民 退避(屋内退避を含む。) 指示する
海上保安官
自衛官

(7) 応急公用負担・警戒区域の設定・住民への協力等(第113条〜第118条、第123条)

 応急公用負担(第113条)
   「公用負担」とは、国や地方公共団体等が公益上必要な事業のために、私人に強制的に課することをいい、緊急の必要があり、他の手段では措置できない場合に適用されるのが「応急公用負担」である。この場合、 「武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において」が「応急」であり、災害の拡大防止が「公益」になる。

命令・執行者 対象者 内     容
市町村長
都道府県知事
吏員
警察官
海上保安官
自衛隊員
所有者
占有者
土地 使用する
建物
工作物
土石 使用する
収用する
竹木
その他
工作物 除去(保管)する
支障となるもの

警戒区域の設定(第115条)
  道路やその他の陸上、または、海上に一般住民の立入禁止区域を設定する。

命令・執行者 対象者 内       容
市町村長 住民 警戒区域を設定 立入制限
立入禁止
退去命令
都道府県知事
警察官
海上保安官
自衛官

住民への協力(第116条)

命令者・執行者 対象者 内          容
市町村長 住民 消火
負傷者の搬送
被災者の救助
その他
協力要請
消防吏員
市町村の職員
都道府県知事
都道府県の職員
警察官等
都道府県知事 市町村 武力攻撃災害の防御 指示する
消防長
水防管理者
都道府県知事
市町村長
職員
市町村 消防に関する措置 自ら指示する
他の都道府県 消防の応援、支援 指示する
住民 保健衛生の確保 協力要請

◇その他(省略)
(埋葬及び火葬の特例)(第122条)
(廃棄物処理の特例)「廃棄物処理法」(第124条)
(文化財保護の特例)(第125条)

(8)被災情報の収集等(第126条〜第128条)

協       力 収    集 報                  告
被災情報を保有する関係機関 指定行政機関 対策本部長 内閣総理大臣 国会
指定地方行政機関 指定行政機関
指定公共機関
都道府県 総務大臣 対策本部長
市町村 都道府県
指定地方公共機関 公 表

6 避難生活

生活関連物資等の価格統制 備蓄・整備

(1)生活関連物資等の価格統制

第129条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長は、…生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律、国民生活安定緊急措置法、物価統制令その他法令の規定に基づく措置その他適切な措置を講じなければならない。

   これは、避難生活に入った後、生活関連物資に対する統制のことである。もちろん、国民の生活安定のために悪徳業者や国民による「闇市」を規制するのが法の趣旨である。しかし、去る戦争において、国家統制の裏側で蠢く軍閥と財閥と官僚等による物資横流し等によって、極端な物資の不足を招き、大多数の国民が餓死と隣り合わせの食生活を余儀なくさせられた記憶はまだ新しい。

   しかし、このこと自体は、戦闘状態を含む戦場から避難できた場合や戦争が終了した場合のできごとである。戦闘を伴う戦場となった場合の「避難生活」はこれまでに書かれてきた条文の一つ一つが何の意味をももたないまさに生死を彷徨う修羅場となるのである。戦争ってこんなものではないよ、と改めて指摘せざるを得ない。

                                                                                                         沖縄戦では

   ちなみに、関連三法は次の内容である。

[参考−関連法]

法令 「物価統制令」(昭21) 「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」(昭48) 「国民生活安定緊急措置法」(昭48)
内容 ○商品の価格、運送賃、保管料、保険料、賃貸料、加工賃、修繕料、その他に対する統制。 ○売渡しに関する指示・命令
○立入検査(報告・立ち入り・検査・質問)
→特定物資の生産、輸入若しくは販売の事業を行なう者に対し、その業務、事務所、工場、事業場、店舗、倉庫、帳簿、書類、その他の物件。
○生産・輸入・保管・売渡し・輸送・設備投資に関する指示
→指示に従わなかつたときは、その旨を公表
○割当て・配給
○立入検査
罰則内容 1年以下の懲役又は20万円以下の罰金
○価格表示、価格報告義務違反
○禁止・制限違反
○帳簿の作成、点検拒否、虚偽等違反
○立入検査に関する報告違反
○虚偽の報告
○検査拒否・妨害・忌避
○答弁黙秘・虚偽答弁
○帳簿を備え、記載し、保存違反
○報告拒否・虚偽の報告
○立ち入り拒否・妨害・忌避○検査拒否、黙秘
○虚偽答弁違反
3年以下の懲役又は100万円以下の罰金
* 売り渡し命令違反 *
5年以下の懲役・300万円以下の罰金
正当な金銭取引以外の負担を付加する取引違反 * 割当て・配給違反
10年以下の懲役・500万円以下の罰金
○統制額以上の価格による契約・支払・受領違反
○違反行為を免れる行為
○不当価格・暴利価格による契約・支払・受領違反
* *

   以下に関することは省略した。
(2)金銭債務の支払猶予(第130条)
(3)被害者に対する「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」の適用(第131条)
(4)融資…政府関係金融機関による償還期限又は据置期間の延長、旧債の借換え、利率の低減の措置(第132条)
(5)日本銀行による銀行券の発行、通貨及び金融調節などの措置(第133条)
(6)生活基盤等の確保(第134条〜第138条)
(7)応急の復旧(第139条0第140条)
                                                                                                   
                                                                                                参照「国民保護の具体的措置

(8)備蓄・整備(第141条〜第151条) 

   この項は「戦争避難」であるが、避難の準備は戦争が始まる前からそれぞれの機関や団体が普段から準備しておくことに定められていることについて触れる。

   戦争で避難する住民のためには、避難施設や救援物資、避難所を造る資材等も必要になる。それらのものを事前に集積して置く場所や建物も必要になる。それらの役目は都道府県や市町村が主となる。いつどこで戦争が始まるか知らないなかで、全国の都道府県や市町村がそれなりの備蓄・整備をしなければならない。現在行われている「災害対策基本法」に基づくものを代替することができるが、自然災害は、大方短期間で復興への道を歩む。戦争は災害と異なることを考えれば、この点からも先が見えない分野ではある。

執行者 対象者 内    容
指定行政機関
指定地方行政機関
都道府県
市町村
指定公共機関
指定地方公共機関
救援物資
救援資材
備蓄
整備
点検
他の物資
他の資材
管理施設
管理設備
整備
点検
都道府県 都道府県 ※1避難施設 あらかじめ指定
指定行政機関 物資資材
職員派遣
供給の要請
要請
指定地方行政機関
特定指定公共機関 職員派遣 要請
市町村 都道府県 物資資材 供給の要請
指定行政機関 職員派遣 要請
指定地方行政機関
※2特定指定公共機関
受入れ都道府県 備蓄物資
備蓄資材
供給
受入れ市町村
政府 避難施設 整備促進

※1「避難施設」→政令で定める基準を満たす施設のことであるが、具体的には学校・公共施設などが対象になると思われる。
※2「特定指定公共機関」とは以下の@〜Lの独立行政法人に「M日本郵政公社」を加えた機関のことであり、専門的立場からの人的支援である。
@消防研究所 A防災科学技術研究所 B放射線医学総合研究所 C国立病院機構 D農業工学研究所 E森林総合研究所
F水産総合研究センター G土木研究所 H建築研究所 I海上技術安全研究所 J港湾空港技術研究所 K北海道開発土木研究所 L水資源機構 M日本郵政公社

(9)道路の占有 (第155条)
(10)電気通信の優先使用 (第156)条)
(11)赤十字標章等や特殊標章等の交付等)(第157条、第158条)(省略)

7 財政上の措置等(第159条〜第171条)

 戦争によってこれまで述べてきた国民の受けた各種の損失や損害について、条文に表れた補償問題を国民との関連に絞って整理すると次のとおりである。

執行者 対                   象 補償内容

都道府県
市町村
(土地等の)
所有者
占有者
物資の売渡しの要請等 損失対象者 損失補償
土地使用
建物使用
他の工作物収用
土石収用
竹木収用
その他収用
工作物収用
他の物件収用
交通の規制等
協力要請を受けた者 死亡 本人
遺族
被扶養者
損害を補償
負傷
疾病
障害
納税者 国税
その他徴収金
被災者 軽減
免除
徴収猶予
その他
都道府県
市町村
地方税
その他徴収金
都道府県 (要請に応じた)
医療関係者
死亡 本人
遺族
被扶養者
損害を補償
負傷
疾病
障害
医療活動 実費補償

   国家権力が始めた戦争に対して国民の税金で補償といわれても複雑な心境にならざるを得ない。それにしても、補償すれば良い、という感が冷たく覆っている。全体として誰の責任とか、何が原因だったとかを問うことのないまま、まるで、天変地異による自然災害後の補償という感が拭えない。自然災害において、時には人災もあるなかで、この国の補償は何時も冷たい印象を国民に与えてきた。戦争とは国家の総力を挙げて遂行されるものであることの認識が不足しているのではないか、ということが、ここ財政の個所でも感じられるが、あるいは、形式的なことを整えておくだけのものということかもしれない。

   補償問題でその他に関する内容は次のようなものであるが、その多くが団体・機関等との関係であるので省略した。

(総合調整及び指示に係る損失の補てん)
(国有財産等の貸付け等の特例)
(他の地方公共団体の長等の応援に要する費用の支弁)
(都道府県知事が市町村長の措置を代行した場合の費用の支弁)
(市町村長が救援の事務を行う場合の費用の支弁)
(国及び地方公共団体の費用の負担)
(国の補助)
(起債の特例)
(武力攻撃災害の復旧に係る財政上の措置)

8 緊急対処事態に対処するための措置(第172条〜183条)

新しい概念の導入で混乱

  新しい概念の導入で混乱

   「武力攻撃事態等法」第24条に基づく条文ではあるが、有事法制としての位置づけは新しい「概念」である。条文は次のとおりである。

緊急対処事態(武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態(後日対処基本方針において武力攻撃事態であることの認定が行われることとなる事態を含む。)で、国家として緊急に対処することが必要なものをいう。)

   「武力攻撃事態」とどこが違うのかというと、攻撃の手段によって区別しているようだ。つまり、「武力攻撃の手段に準ずる手段」による事態である。したがって、政府の対処も、「武装した不審船の出現、大規模なテロリズムの発生等」による事態を想定し、その対処措置を条文化している。「武力攻撃」が主として国家の軍隊による攻撃であるのに対して「緊急事態」は武力集団による事態という認識であろう。
  
   ただ、この章の多くの条文がこれまでの条文の「読み替え」(第7条から第171条までの127箇条)になっていることや中心となる「基本指針」などに、逆上って追加する条文などもあって法全体が分かりにくく、ただでさえ不明朗な「武力攻撃事態(戦争状況)」がいよいよ見えにくくなっていることは確かだ。

   「緊急対処事態」で誰が誰にどうするかは次のとおりだが、その内容はやはり明確ではない。

対処方針の決定 @緊急対処事態の認定
A認定の前提となった事実
B対処に関する全般的な方針
Cその他重要事項
緊急対処措置を実施
都道府県・市町村を支援
指定公共機関を支援
万全の態勢の整備
対策本部設置
対処方針の公示
都道府県 「対処方針」に基づき 緊急対処措置(※)を実施
総合的推進
・この法律
・他
・国民保護計画
緊急対処保護措置(※)を実施
指定行政機関 要請をする
指定地方行政機関
都道府県の委員会 都道府県知事の下に 緊急対処保護措置を実施
都道府県の委員
公共的団体 協力する
市町村 「対処方針」に基づき 緊急対処措置を実施
この法律・他・国民保護計画 緊急対処保護措置を実施
都道府県の知事等 要請をする
指定行政機関
指定地方行政機関
市町村の委員会 市町村長の下に 緊急対処保護措置を実施
市町村の委員
公共的団体 協力する
指定行政機関
指定地方行政機関
・この法律
・他
緊急対処保護措置を実施
国民保護計画
指定公共機関 要請をする
指定地方公共機関
指定公共機関
指定地方公共機関
その業務に係る緊急対処保護措置を実施
その業務に係る緊急対処保護措置を実施
指定行政機関 労務の確保 応援を求める
(断れない)
指定地方行政機関 施設の確保
都道府県 設備の確保
市町村 物資の確保
国民 協力を要請されたとき必要な協力に努力する

都道府県
市町村
損失補償 手続の迅速処理
不服申立て
訴訟
その他

   表中、「緊急対処措置」と「緊急対処保護措置」はこの章の中心部分であるが、その内容は条文によれば次のとおりである。

(第25条)   緊急対処措置とは、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が実施する次に掲げる措置をいう。
一 緊急対処事態における攻撃の予防、鎮圧その他の措置
二 緊急対処事態の推移に応じて実施する警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧その他の措置

    このなかで、 「攻撃の予防」、「鎮圧」の内容が具体的に何を意味しているのか不明である。「鎮圧」に関して、「自衛隊法」には「治安出動」に出てくるが、民間の指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関が行う「鎮圧」や「攻撃の予防」の内容をどう捉えるか不明である。

第172条
…緊急対処保護措置… 緊急対処事態において、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関が第183条において準用するこの法律の規定に基づいて実施する措置その他これらの者が当該措置に関し国民の保護のための措置に準じて法律の規定に基づいて実施する措置をいう。

   「緊急対処保護措置」についても、それぞれの段階においての具体的なことは明らかではないが、大方は、武力攻撃事態等への対処の「読替え」となっていてこれまで述べてきたことと重複するのでここでは省略する。

   さらに、「国民の協力」(第173条)「基本的人権の尊重」(第174条)に関しては、第4条から第6条の条文を繰り返しているにすぎなくて、詳しくはそこで論じたので省略する。

                                                                                                               参照「国民の協力等」

 9 結びにかえて

  この「有事法制」が国民の危機意識を転換させる過程において、国防意識の涵養と国家秩序の維持を謀る国家権力の意図のその先についても触れなければならない。それは、「有事法制」を構成する法律等に出てくる「日米安保条約」とつながるアメリカ軍との関係である。「日本に攻撃を仕掛けてくる国の存在は考えにくい」とする政府が、戦争に向けて足早に国民統合の法制化を意図することは、現在のアジア情勢との関係で捉える側面も重要である。

 なによりも「日米安保条約」でつながったアメリカとの「同盟関係を大切にする」自公政府の姿勢が、法制化を急がせているのである。「新ガイドライン」以降、「周辺事態法」「テロ臨時特別措置法」と徐々に自衛隊の出動範囲を広げ、アメリカ軍と共同作戦を討議する段階まできた。

 憲法改正と連動して、自衛隊を軍隊として法整備し、その勢いで国民皆兵へと突き進む意図は明白である。つまり、集団自衛権を公然と行使できる法制化をなし遂げることによって、自衛隊が堂々と出撃できる体制が出来上がるのだ。

 その時、アジア情勢の如何によっては、自衛隊がアメリカ軍の下で、アジアのどこかで戦争をしている姿が浮かぶ。しかし、その仮想は決して完成させてはならない。われわれは、今真に国民を守る政治がどういうものであるかの力が試されている。自治体の受け皿づくりはこれからである。もっとも身近な政治の場である市町村で、住民自治を発揮できるようにしたい。

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