平和教育国語科授業案(三学年)         

一 単元名  状況に生きる  

二 題材 「慰霊の日の『平和宣言』」

三 題材について                                

 毎年六月二十三日、本校区内にある摩文仁の「平和祈念公園」で、沖縄県の「沖縄全戦没者追悼式」が行われる。この式典では、県知事が「平和宣言」を読み上げ、内外に戦争の悲惨さと平和追求の姿勢をアピールする。

 「平和教育」の指定を受け、本地区が沖縄戦の激戦地であり、終焉の地であったことと、「沖縄全戦没者追悼式」という重要な行事が行われていること等を考え、なんとか授業に生かせる方法はないかと考えていた。

 戦後五十年を経過し、一区切りの行事も各種行われ、また、知事の将来への展望としての沖縄の未来像等も煮詰まりつつある昨今、「宣言文」も内容の濃いものとなっている。将来への展望も折り込まれたものになっていることに教材化のポイントがある。

    沖縄戦の悲惨さのみならず、将来の沖縄はどうあるべきかの一つの提案を含んでおり、中学校を卒業していく三年生にとって、自分の足元をみつめ、自分を含む沖縄の将来について散文の読解を通して考えるよい機会としたかった。           

四 文章構成について

 十二段落構成で、「宣言文」としての形式を備えているが、内容は次の通りである。
@段…沖縄戦の想起。                             
A段…沖縄戦から学んだことは、生命の貴さと共に助け合うことの大切さ。     
B段…県民のこの心は、戦後五十年間無視されてきた。
C段…異民族の統治。広大で過密の米軍基地と各種の問題点と事件・事故によって「平和的生存権」さえ享受できない現状。                    
D段…一方、世界の状況は、対話と協調に入ったが、平和秩序の確保はまだである。
E段…その事例として、地域紛争、核実験、差別・貧困・暴力等。
F段…平和な国際社会をめざして共にたずさえること。
G段…沖縄は、「非核平和沖縄県宣言」によって、平和の発進地をアピールした。
H段…普天間基地の返還は県内施設など大きな課題が残っている。
I段…沖縄の問題は、日本全体の問題。すべての国民が主体的に考えるべきである。
J段…基地を生産の地に変え、希望のもてる沖縄の建設。国際都市の形成。     
K段…歴史の教訓を心に刻み、世界の恒久平和に向けて全力を傾けること。     

五 教材化にあたって(教材化の視点)

 散文とはいえ、宣言文は圧縮された表現の連なりによって構成された文章の読解は容易ではない。そのことから、まずは徹底した「具体化」の作業を重視した。

(1)難語句の徹底克服(内容については板書事項を参照)

@段…「沖縄戦での悲惨な出来事」                      
A段…「沖縄戦の惨禍」(@に同じ)
B段…「叫びが無視され」                          
C段…「異民族の統治」「広大で過密な米軍基地」「空や海を使うにも大きな制約を受ける現実」「基地から派生する事件・事故」「憲法に保障された平和的生存権」
D段…「東西の冷戦」
E段…「中東や旧ソ連の地域紛争」「非人道的な核兵器の実験」「差別・貧困・暴力・環境破壊」
F段…「民族や宗教、文化の違い」
G段…「沖縄戦の未曾有の犠牲」(@に同じ)
H段…「非核・平和沖縄県宣言」
I段…「県内の既存の基地への移設」
J段…「生産の場」「アジア太平洋諸国との長く友好的な交流の歴史」「地理的特性」「国際都市」
K段…「太平洋戦争の最後の激戦地」(@に同じ)               

(2)既習の知識を最大動員

    次に重視したことは、これらの具体化の作業には、社会科において一年生で学習した地理的分野、二年生で学習した歴史的分野、三年生で学習している政治・経済分野の知識を最大動員させる必要があったことである。

(3)将来への展望を持たせること

 三番目に重視したことは、とかく沖縄問題はマイナス面が多いだけに、知れは知るほど八方塞がりの状況に直面しがちである。このような点を十分留意し、将来に向けて展望の開けるとらえ方が大切だと考える。その意味でもJ段落は強調して大切に扱いたい。特に「基地を生産の場に変える」ことや、「国際都市形成」構想が、単なる夢物語でなく、沖縄は「アジア太平洋諸国との長く友好的な交流」があったことや、「地理的特性」を生かすことが、そのことを展望あるものにしていることを明確に読み取らせたい。     

(4)「調べ学習」の取り入れ

 四番目に、読み進めていく過程で、生徒の能力に応じた「調べ学習」を取り入れることである。そのことによって読みが深まり、問題の認識も深まるであろうと思われる。

六 授業の計画

時間 学習活動 留 意 点
1 ○全文の読みと難語句調べ
・段落分け        
○ 要約には、主語と述語の関係をきちんとと らえることによって容易にする。     
○ 指示語の内容をとらえることによって内容 の把握を援助する。      
○ 接続詞(語)に注意して読むことによって 内容の把握を援助する。   
○ 音読によって、理解を援助する。 
○ 資料や絵、写真等を十分に活用する。  
2〜5 ○本文読み(@段〜K段)
・音読(指名読み) 
・要約       
・具体化作業      
6 ○まとめ読み
・音読       
・感想書き(将来の沖縄)


七 授業の実際(生徒のノートから〜書き方は紙面の都合上実際とは変えた部分がある)

〔本文よみ〕 
@ 私たちは、思い出す。
    ↑                               
    悲惨な出来事──┬○人が人を殺したこと         ○餓死
                  │○家族がバラバラになったこと。   ○負傷死
                  │○一家全滅                 ○毒殺
                  │○「集団自決」                 ○その他  
                  └○病死

A 体験し学んだことは → ○人間の命の貴さ(命どぅ宝)
                         ○共に助け合って生きる(ユイマール精神)

B  しかし 県民の平和を願う心からの叫び無視された
                                           │    │                
  ┌───────────────┘    └──┐○日本政府
  │○戦争をなくす                             │○本土の人々
  │○共同社会                              │○アメリカ
  │○軍事基地をなくす                        │○米大統領(米政府)
                                                
     ※「戦前の苦難の歴史」(調べ学習)

C異民族(アメリカ) ── 統治
             ↑                          
            沖縄を                         
   ○沖縄は →自らの土地を自由に使えない・空や海にも制約          
      ↓                                  
   ア 基地にとられた土地(沖縄の土地の約24%)
   イ 基地の上の空(嘉手納飛行場など)
     海(射爆場)
      ↓                                 
   ○都市づくり・雇用問題・産業の振興──思うとおりにいかない
   ○米軍による事件・事故(落下事故・墜落・殺人・障害・犯罪など)
   ○人間の尊厳を侵す事例(少女暴行事件など)
      ↓                                 
   県民は──「平和のうちに生存する権利」                 

D 一方世界は──東西の冷戦→終わった
                ↓                       
           対話と協調の時代
   しかし 平和秩序は→出来上がらない

E 例えば
   ○地域紛争→多発(中東・旧ソ連)              
    ※イイ戦争・独立紛争など                        
 ○核実験を繰り返す国々→ある
    ※フランス・中国
 ○また 世界は →平和を確保出来ない状況
    差別(人種・性など)・貧困(アフリカ・インドなど)
    暴力(アメリカ・南アフリカなど)・環境破壊(森林・温暖化など)

F平和な国際社会を築きあげることは→理想
     ↓ したがって                        
   私たちは →平和への道を切り開く
   ア協力しあう イ民族の違い ウ宗教の違い エ文化の違い         

G私たちは →アピールした
            ↓
 「非核平和沖縄県宣言」=○平和をつくること ○核を認めない(非核三原則) ○沖縄戦の惨禍のこと ○沖縄が平和の発進地になる

H このように
     ○県民の努力 →実り
        ↓
  普天間飛行場などの返還の合意
  ○基地問題の解決の兆し →見えた
  ○ しかし 多くは →県内への移転
           ‖                            
  ○多くの課題が →残された

I沖縄の基地問題は →日本全体の問題である(同じ日本人として)
     ↓
  国民すべてが →自らの問題として考えること(国民の民主主義の問題)

J私たちは →決意する
 ア基地を生産の場に変える(農地・工場など)
 イ平和な沖縄をつくる(仕事がある・お金がある・電車があるなど)
 ウ国際都市をつくる=平和交流の拠点                    
      ↑
 ○交流の歴史・地理的特性を生かす──※東南アジアとの貿易(14世紀ごろ)
                                  ※東南アジアに近い

K私たち沖縄県民は →宣言する
     ↓
  恒久平和へ全力を傾けること                        


八 題材「慰霊の日『平和宣言』」                                  

@ 私たちは、人間が人間でなくなってしまった、あの沖縄戦での悲惨な出来事を昨日のことのように思い出します。

A 私たち沖縄県民が、沖縄戦の惨禍を通して、身をもって体験し学んだことは、「命どぅ宝」という人間の生命の貴さと、祖先から脈々と受け継いできた、戦争を憎み、平和を愛し、共に助け合って生きるということの大切さでありました。

B しかし、戦後の五十年は、戦前の苦難の歴史と同様、平和を願う県民の心からの叫びが無視され続けてきました。

C 二十七年にも及ぶ異民族の統治。平和憲法の下に復帰して二十四年余を経過した今もなお、広大で過密な米軍基地が存在することによって、自らの土地を自由に使うことが出来ないだけでなく、空や海を使うにも大きな制約を受ける現実。その結果、地域の都市形成はもとより、雇用問題や産業の振興も思うにまかせません。加えて基地から派生する事件・事故も後を絶たず、人間の尊厳を侵す事例も数多く発生しています。その結果県民は、憲法に保障された「平和のうちに生存する権利」さえも享受できない状況にあります。

D 一方、世界をみても、東西の冷戦が終結し、対話と協調の時代に入りましたが新たな平和秩序はいまだ構築されていません。

E 中東や旧ソ連などでは地域紛争が多発し、世界中の抗議にもかかわらず、非人道的な核兵器の開発のため、核実験を繰り返す国々もあります。また、差別、貧困、暴力、環境破壊など、平和を脅かす様々な問題によって、世界はいまだ平和を確保できない、悲しむべき状況にあります。

F 平和な国際社会を築きあげることは、世界のすべての人々が等しく願ってやまない純粋な気持ちであり、理想であるはずです。したがって私たちは、平和を阻むどのような要因があろうとも、地球の一員として、民族や宗教、文化の違いを理解し合い、共に手をたずさえ、平和への道を切り拓かねばなりません。

G 私たちは、昨年、沖縄戦の未曾有の犠牲と教訓を踏まえ、世界の恒久平和を希求する「非核・平和沖縄県宣言」を行い、平和の発進地沖縄を内外にアピールしました。

H このような平和を願う私たち沖縄県民の不断の努力が実り、日米両国政府の特段のご尽力によって、普天間飛行場などの返還が合意されました。しかしながら基地問題に解決のきざしが見えてきたとは言え、その多くが県内の既存の基地への移転を前提とするなど、なお多くの課題が残されています。

I 沖縄の基地問題は、日本の民主主義が問われる、すぐれて日本全体の問題であります。「平和的生存権」の問題を含め、国民すべてが自らの問題として主体的に取り組む必要があると考えます。

J 私たちは、基地を平和と人間の幸せに結びつく生産の場に変え、来るべき二十一世紀に向け、若者が夢と希望のもてる「基地のない平和な沖縄」を作ることを決意します。そして、アジア太平洋諸国との長く友好的な交流の歴史と地理的特性を生かし、日本とアジア、そして世界を結ぶ平和の交流拠点となる国際都市の形成に沖縄の未来を託したいと思います。

K 私たち沖縄県民は、太平洋戦争最後の激戦地となったここ摩文仁に立ち、歴史の教訓を改めて深く心に刻み、世界の恒久平和の実現に向け全力を傾けることを高らかに宣言いたします。
        

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