大学(教職課程)での平和教育                                   05年3月更新
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「沖縄戦の概要(テキスト1)」  「総合的学習の概要(テキスト2)」
学生の課題解決(02年前期)  学生の課題解決(03年前期) 学生の課題解決(03年後期)
学生の課題解決(04年前期) 学生の課題解決(04後期)
学生の講義感想(03年前期) 学生の講義感想(03年後期)

この実践はO大学での「教職総合演習」講義において、「総合的学習」と「平和教育」を複合的に構成して実践したものである。

1 講義概要

我々は、戦争を科学的に把握し、平和を劇的に創造しなければならない。
人間は状況で行動する。状況もまた人間が創る。状況はいかに創られるか。

   「総合的学習」は、日本の教育の大きな転換をもたらすものである。基本的には教師主導で進められた従来の指導の結果が、生徒の学習を受け身の活動にし、子供たちの「指示待ち症候群」等をもたらした。その打開をはかる試みが、02年(平成14年)度から導入された「総合的学習」である。

   この「総合的学習」の主たる目的は、児童生徒が、自ら課題を見つけ、解決していく力を育成するための教育活動といえる。教科の枠を超えた「横断的学習」を構成したり、学級の枠を超えた学年合同集団や異学年集団による学習をも可能にする。そして、学習内容は環境問題や国際理解・平和問題等のように、世界や日本の課題と係わらせたものとなる。人類の課題を題材にして、知の総合力としての「生きる力」を育もうというのである。
本講義は、以下に述べる観点から「平和問題・平和教育」に焦点をあて、調査活動や追体験等によって総合的学習の研究と指導の方法論を学ぶことになる。

   「平和問題」を振り返ってみた時、戦争と平和の繰り返しは人類にとって避けがたいものであろうか、という疑念が湧く。人間の知恵のすばらしさと愚かさの両面を切り取りミックスすれば何が合成されるのか。限りなく愚かな人類の戦争の歴史を止めるのは、それでもやはり人類でしかないのだ。とすれば、人類の構成員である我々自身は、何を考え何を感じ、どう行動するのか。この課題はとてつもなく重要である。

 すべての戦争に共通するのは人間のエゴであろう。エゴは人間の弱点であり盲点である。そしてその破壊的エネルギーは、生命尊厳の喪失、人間尊重の崩壊、人権感覚の麻痺、個の否定、異文化理解の欠如等に潜んでいる。これらの要素に対置して我々の思考と感性に支えられた創造のエネルギーとは何なのか?それは人類の崇高さと愚劣さを徹底的に分析し追究した後に見えてくる人間と人間社会(国家)の真実だ。

 不幸にも、我々の住む沖縄は、人類の愚かさの表現である戦争(戦場)の舞台を経験している。五十数年前この地では「沖縄戦」があった。三か月余にわたり二十数万人の尊い命が失われたが、そこでは何が進行していたのか。そして、その後、新たな愚弄すべき戦争への道具が一方的に置かれている。まさに沖縄は、戦争という人類の愚劣な行為のすべてを歴史の中に刻みこんでしまった島である。

   しかし、万物は一面のみにて存在しない。不幸な存在を幸福に転じるエネルギーを保持しなければならない。その知恵と力を結集し保持するのが本講義の一つ目の目標である。
 また、人間は状況で行動する。そして、その状況もまた人間が設定する。状況はいかに設定されるのか。平和はいかに創造されていくのか。われわれは、戦争を科学的に把握し、人間的な視点から平和を劇的に創造しなければならない。真の平和創造を視野に入れつつその知識と感性と行動をいかに継承していくのか、これが本講義の二つ目の目標である。

2 具体的目標        
(1)学習・研究の側面(学ぶ)
  〇沖縄戦を通して戦争の実相を把握し、真の平和創造の認識を育てる。
  〇総合的学習の方法を知り、平和教育に生かす能力を育てる。
(2)指導・教授の側面(教える)
  〇総合的学習の実践的方法の能力を高める。
(3)活動・運動の側面(行動する)
      〇戦争の実相を把握し、平和創造の活動を展開する態度を育てる。

3 学習内容
(1)縦軸(基本的内容)−総合的学習
 @ 総合的学習の内容
 A 総合的学習実践の基盤
 B 総合的学習展開のステップ
 C 総合的学習の実際
(2)横軸(展開的内容)−沖縄戦
 @ 戦争把握と平和創造の根本姿勢
  ア、戦争の科学的把握…緻密な調査と冷静な分析に基づく総合的判断
  イ、平和創造への人間的視点…生命尊厳、人間尊重、人間愛(人類愛)、人権擁護等
  ウ、平和創造の劇的な方法…立体的・多面的行動を生み出す人間的な行動。
 A 戦争分析と平和創造の視点
  ア、二つの要素…国家と国民
  イ、三つの側面…戦争、平和、国際関係
  ウ、四つの関係…国家(国民)が戦争へ、国家(国民)が平和へ、国際関係が戦争へ、   国際関係が平和へ、
B 沖縄戦の概要
 ア、沖縄戦の経過…住民はいかにして戦争に巻き込まれていったか。
 イ、沖縄戦の特徴…人間破壊の修羅場を生み出したものは何か。
 C 沖縄戦の教訓
 ア、沖縄戦の意味…平和創造の視点
 イ、追体験…戦争体験の共有
 ウ、慰霊塔…戦争の反省と平和創造への視点(生き残った者の戦争体験の総括)
 エ、平和教育の方法
 D 平和の創造 
   ア、人間として
   イ、自立すること
   ウ、知ること
   エ、行動すること

4 運営方針
(1)「学習」と「教授」
 @ 学習
学生が自主的に「学ぶ」ことによって、「総合的学習」や「平和問題」「平和教育」  についての知識や認識を豊かに高めていくことは重要である。
 A 教授
 学生が自ら学んだ事柄を児童・生徒にいかに継承していくのか、その方法について  考えることがもう一方の側面である。したがって、この講義は、同時に二つの側面を 持ちつつそれを意識的に捉えさせることを重要視する。
  ア、総合的学習の理解を深めるため、総合的学習の支援活動を行う。
  イ、平和教育の寄与とともに、自ら平和創造の主体性を確立するため、沖縄戦を通し   て戦争と平和についての認識を高める。
(2)授業形態および授業展開
 @ 民主的活動の能力を高めるため、発表・討論等を多く取り入れる。
 A 授業展開…総合的学習による研究・指導の二重構造の方法論
 B 授業形態…班単位による共同学習を基盤に、個人や班による自主的活動を積極的に 取り入れる。
(3)自主活動の能力を高めるため学生の運営委員会を組織する。
 @ 委員…班から一人。互選で運営委員長一人、副委員長一人(兼書記会計)を選出。
 A 役割
 ア 授業進行の調整と授業の運営
 イ 各班の連絡調整
 ウ 講義に関する記録・資料の整理等
 エ 演習・実地調査等の計画・運営・連絡調整等
 オ その他
※事前の学校車の借用申し込み等
 B 班の運営について
 ア 名班とも授業外活動により、十分な調査、討議を経て授業に臨むこと。
 イ 各班は、班の共同研究や調査等の記録を残すこと。
(4)体験・調査活動について
 @ 交通手段〜運営委員会の計画に基づく。
 A 調査方法〜同上
 B 調査・発表費用〜大学の補助金制度の活用及び本人負担とする
 C 授業以外に自主的な研修活動を設定する。
 D 班の調査活動や聞き取りは各班で計画運営する。

5 授業計画
※回の数字をクリックするとその講義の内容がわかります。ただし、計画と実際の内容には変更等により一致しない場合があります。

授業の展開 学 習・指 導 内 容 目   標 主な資料等
1 登録と講義計画 ・主体的な講義への関わり
・総合的学習による沖縄戦の平和教育
・課題発見の仕方
・講義への意欲、関心
・課題発見の意欲喚起
「講義概要」
「総合的学習の概要」
2 ステップ1
「課題の発見と設定」
・課題発見と設定 (各自の課題から班の課題へ)
・沖縄戦学習の視点
・課題の意味
・沖縄戦から課題を発見する
「学習活動計画表(生徒用)」
「沖縄戦の概要」
3 ステップ1
「課題発見と設定」
・課題解決の方法
・証言が伝える沖縄戦の真相
・課題追求の計画
・沖縄戦の実態把握の方法
「学習活動計画表(生徒用)」
証言にみる沖縄戦の特徴
4 ステップ2
「課題追求・展開」
・課題の具体化(下位課題)支援活動
・学習活動計画の決定
・戦争と法制(徴用)
・戦争動員の背景 「計画表(生徒用)」
「総合学習の概要」
「戦争動員の法制」
5 戦跡巡検 @戦跡A避難生活B住民と日本兵C住民と米軍 ・住民の避難と日本軍や米軍との関係を間接体験する。 「戦跡巡検計画」
6 ステップ2
「課題追求・展開」
・「各班の課題一覧表」
・沖縄戦と日本軍(32軍)
・沖縄戦の被害状況
・共通課題の解決
・沖縄戦の被害の原因
「32軍関連資料」
7 ステップ2
「課題追求」
・資料の読みと発表
・「証言をどう読んだか」
・沖縄戦における被害の実態
・証言のもつ意味
沖縄戦体験者の証言
8 ステップ2
「課題の追求・展開」
・証言の聞き取りについて
・碑文研究
・調査活動の方法
・碑文から見える沖縄戦の本質
「証言の聞き取り」
「聞き取り質問事項」
「碑文の分類と検討」
9 ステップ3
「課題の解決・整理」
ステップ4
「課題の評価・伝達」
・課題解決の方向性と支援
・発表会と運営、評価
・「沖縄戦と平和教育(上)」沖縄戦の教訓から平和教育へ
戦争の原因と責任問題 「総合的学習指導計画案」
「総合的学習の個票」
「報告会要項」
10 総合的学習のまとめ ・総合的学習指導案
・「沖縄戦と平和教育(下)」・平和問題から平和の創造
・総合的学習の方法の理解
・戦争と平和の認識が深まる
「沖縄戦の概要」その他
11
〜12
(発表会) ・ステップ4 「総合評価と伝達」 ・報告と質疑応答
・評価
・発表の仕方
・発表会の進め方
・課題に対応する資料活用の視点が捉えられる
・沖縄戦の教訓が生かせる
・戦争と平和の概念を明確にする。
「評価の方法」
13 戦争と平和への一般化〜沖縄戦継承の道筋と平和創造 ・平和創造の関係〜二つの要素、三つの側面、四つの関係の具体的認識
・「総合表現」原稿(小論文)の書き方
・平和学習について総合的学習をどう進めるか
・沖縄戦をどう伝えるか
「沖縄戦の概要」
「小論文の書き方」
14
〜15
(発表会) ・総合表現 平和の創造と継承
・総合的学習における平和教育の進め方
・学ぶ・教える・行動する
・平和創造の考えを確立する
・沖縄戦継承の道筋を明確にする
意見発表 「総合表現原稿の書き方」
(講評)・全体総括

※ 「戦跡巡検」は連続時間確保のため振替授業とする(日程調整)。
※ 自主研修活動として「米軍基地巡検」を複数回行う(日程調整)。
※ 調査活動・発表会等の実施要項は事前に検討する。

6 学習活動の内容

(1)資料分析…資料はそれだけで価値はない。課題に対応した視点を設定し、その視点から客観的に分析していく中で、その価値が見えてくる。
(2)証言分析…証言は、そのままでは戦争の実相を表現しているとはいえない。証言に潜む真実を捉えることによって戦争の実相が見えてくる。
(3)調査活動…事物は五体で把握することによって、その本質に迫ることができる。 
(4)体験活動…戦争の実態に触れるためには戦争体験に最も近い体験をすることである。ガマでの追体験は現在残された最良のものの一つとなる。
(5)演習…知的内容を試行することによって整理・定着することである。
(6)発表・報告…調査研究した結果を形として表現したものである。したがって発表・報告は、一定の様式による多様な方法が有効である。
(7)討論…知的深化を図る最大の方法は、討論(ディスカッション)である。多様な視点からの論の展開によって各自の認識を高めることができる。

7 授業の具体的展開(例)

(1)「学ぶ」(生徒の立場になって班活動による総合的学習の展開)
@ ステップ1(課題発見・設定の段階)
ア 課題への意欲喚起
イ 課題を発見する
ウ 学習活動計画作成する

A ステップ2(課題追求・展開の段階)
ア 課題の解決の方法について理解する
イ 体験者に聞く
ウ 証言の分析
エ 資料を集める(資料館やインターネットなど)
オ ガマ巡検をする
カ 慰霊塔の調査
キ 中間発表をする

B ステップ3(課題解決・整理の段階)
ア 資料の整理
イ 課題の解決
ウ 課題の整理(報告書の作成)

C ステップ4(総合評価・伝達の段階)
ア 発表をする
イ 討論する
ウ 評価する

(2)「教える」〈教師の立場−個人)
@ 指導案を作る
A 指導案の検討

(3)総合表現
@ 総合表現発表会(個人)
A テーマ「(仮題)私の平和教育」(「学ぶ・教える・行動する」の観点から)

8 教材及び学習資料等
(1)テキスト…「総合的学習の概要」、「沖縄戦の概要
(2)ホームページ
「沖縄戦の記憶(本館)」http://hb4.seikyou.ne.jp/home/okinawasennokioku/
「沖縄戦の記憶(分館)」http://hc6.seikyou.ne.jp/okisennokioku-bunkan/
(3)資料…随時配布
(4)自作資料…学生自らの自作資料等(随時)

9 報告書及び評価                              ※学生の報告書はここをクリック
(1)報告書(レポート)について
 @ 提出文書
 ア 小論文(添付資料)…「総合表現」の内容をもとに小論文にまとめる
 イ 講義の評価と感想(アンケート)
 A 小論文内容
ア 1枚目にテーマ(課題)、学部・学科・年次・番号・氏名を記入する。
イ 2枚目以降に内容(三千字程度)、資料添付、参考文献等を記入する。
ウ 引用文には「 」をつけ、注をつけて引用文献を明記する。
エ A4版・横書き、ワープロ書きとする。

(2)評価について
 @ 評価は、ア出席(授業態度)、イ実習・演習、ウ総合表現、エ報告書等の総合評価とする。
 A 評価の割合〜(省略)

10 留意点
(1)沖縄戦に関する証言や記録などを多く読むこと。
(2)身内や知り合いに沖縄戦の聞き取りのできる体験者を捜すこと。
(3)表現力向上のために必ずメモをとること。

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