大学(共通科目)での平和学習                              03年9月開設

学生の作品研究・小説の部         学生の作品研究・詩の部      学生の受講感想

これは、O大学での共通科目(一般教養科目)である「戦争と文学」の講義を通しての実践である。

「戦争と文学」講義概要

1 講義概要

「戦争と文学」という設定は様々な捉え方を可能にしてくれる。一つ目は、戦争と文学という客観的なそれぞれの概念を対置して把握する捉え方である。この場合、「戦争」と「文学」という異質の概念の関連性を追求するテーマが浮かび上がってくる。

二つ目は、戦争文学という概念の把握である。(戦争のために)文学はどのように表現してきたのか、がテーマとなる。それは、専ら戦争遂行や戦争賛美、あるいは戦争表現(記録))そのもののための文学という捉え方となり、その意味では純粋に「戦争と文学」とは言えないのかもしれない。

三つ目は、前者の対等関係の概念を入れ換えることによって、「文学と戦争」と置き換えた時に生じる概念の収束である。つまり、対等関係にある「文学」と「戦争」から「文学における戦争」が成立する、という観念であり、文学で描かれた戦争の実態を把握する捉え方である。人類史上、無数に描かれてきた「文学における戦争」についての把握である。換言すれば、文学は戦争をどう描いてきたのか、がテーマとなる。しかし、その根底には虚構である文学が歴史的事実である戦争をどれだけ描けるのか、という文学の生命ともいうべき側面が横たわっている。

この講義は、三つ目の捉え方を基盤として展開される。文学は、人間を中核として社会や自然に潜む真実や美を追求するが、それはとりもなおさず、我々が人間本来の欲求によって己の人生を全うしようとする時、文学は我々にとって不可欠なものとなるのは必然となる。人間の生きざまを追求するのが文学の一つの範疇であるなら、文学は人間の追求方法としていかなる状況を設定するのか。

しかし、人間の本質は日常性の中には容易に表出されない。非日常性の中で人間の本質が表出されるものであれば、最たる非日常性は戦争である。その時、人間はどう生きるのか。逆説的に言えば、人間が人間としてのベールである人間性を喪失(あるいは破壊)した戦争の中でこそ人間そのもの(それを人間の本質と呼ぶかどうかはさておいて)が追求できると言えよう。

一方、我々は「戦争」そのものと直接的に関わっていることは少ない。それにしても、「戦争は他の手段による政治の継続である(クラウゼウィツ)」ことや「政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治である(毛沢東)」(「世界大百科事典」平凡社)ことを考慮すれば、我々の日常が戦争との関わりは少ないとは言えない。我々の人生は常に政治の流れの中にあるのであって、それと乖離したところでの愛や美の追求は幻想でしかない。それゆえにこそ、文学は永久的に戦争を表現してきたのである。

そのような観点から「戦争と文学」を捉えた時、我々に見えてくる戦争はどのようなものであろうか。いや、文学から戦争を見るのではなく、文学に描かれた戦争から我々はどのような人間を垣間見ることができるであろうか。

2 講義の範囲

 戦争と文学を二十世紀以降に限定し、「文学における戦争」を入り口として「人間」を把握することにする。 
        
3 講義の内容

(1)文学が戦争を表現することの意味は何か。
@ 虚構としての文学の真実性とはなにか。
A 戦争は人間の本質をどう表現したか

(2)文学は、戦争の真実をどのように表現してきたか。
@ 事実としての戦争の真実とはなにか。
A 文学における戦争の表現

(3)「沖縄戦と文学」、「原爆と文学」を特設する。

4 講義計画

(1)講義の展開方法
@講義形式…必要最小限に止める。
A学生の報告…指定「短編小説」又は「詩」についての「作品研究」報告を行う。
学生数や受講状況によって希望制や抽選制をとり回数を限定する。
B討論形式…「作品研究」報告にはもとづくディスカッションを設定する。
C講義と報告と討論…一単位時間の中での実施も検討する。

(2)講義の時間配当と内容

形 態 内            容 資          料
1 基礎講義 虚構としての文学の真実 「文学とは何か」
2 基礎講義 戦争の真実とは何か 戦争の概要
3 基礎講義 文学は戦争の何を表現したか(1) 「戦争文学」
4 基礎講義 同(2) 「戦争文学」
5 講    義 作品研究@「テニアンの末日」(1) 中山義秀「テニアンの末日」
6 講    義 同(2) 同上
7 講    義 作品研究B「火の唇」(1) 原民喜「火の唇」「夏の花」他
8 講    義 同(2) 同上
9 発表と講評 学生作品研究@班A班[※1] 「水ヲクダサイ」「夏の花」
10 発表と講評 学生作品研究B班C班D班[※1] 「ヒロシマ神話」「川とノリオ」他
11 発表と講評 学生作品研究E班F班G班[※1] 「わたしが一番きれいだったとき」「木琴」他
12 発表と講評 学生作品研究H班I班J班※1] 「お辞儀するひと」「凧になったお母さん」「仮繃帯所」
13 発表と講評 学生作品研究K班L班M班[※1] 「火の記憶」他
14 発表と講評 学生作品研究N班O班P班[※1] 「沖縄の手記から」他
15 ま と め 戦争文学をどう読むか 「戦争状況と文学の視点」

5 テキスト及び講義資料等

(1)戦争と文学をどう教えられたか…教科書に載った作品(小説及び詩)
(2)短編(もしくは中編)小説
(3)テーマに沿って随時、資料と講義プリントを配布する。

6 評価

(1)評価の観点…ア、講義の出席と受講状況、イ、「作品研究」提出、ウ、講義感想
(2)評価の基準…優(80点以上)、良(70点〜79点)、可(60点〜69点)、不可(60点未満)
(3)評価の割合…ア(40%) イ(40%) ウ(20%)
(4)「作品研究」提出について
○作品は自由選択とする。
○内容は評論形式とする。
○字数は3200字程度(原稿用紙8枚)とする。
○ワープロ書き。
○A4版横書き(2枚)。
○表紙には「文種」「書名及び巻または版名」「作者名または編集者名」「出版社名」「学 部学科、学生番号、年次、氏名」を明記すること。

(5)講義感想について
○講義の内容や展開方法等について全般的な感想
○講義や学生の報告で使われた作品についての感想
○戦争と文学についての全般的感想
○ワープロ書き
○A4版横書き(字数制限なし)

7 留意点

(1)講義資料及び作品研究のための作品等は事前に読破しておくこと。
(2)一人一作品の作品研究をし、報告する。(受講生多数の場合は班単位等で実施)
(3)学生の報告に対するディスカッションに積極的に参加すること。


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