文化祭における平和教育の実践    文化祭の計画と実践方法

1 位置づけ

 三年に一度行われる「文化祭」に「平和」を位置づけようと、職員会議で決定する。それを受けて「文化祭」の統一テーマに「命どぅ宝、21世紀にはばたく我ら」を決めた。

 沖縄戦の激戦地であった島尻にある本校としては、平和に関する取組みを学校行事で進めていくことは有意義であるばかりでなく、責務をも課されていると考える。

 そこで、平和学習を一学期の6・23特設授業、二学期の文化祭を中心に、学校行事に位置づけるようにした。特に文化祭は、地域に息づく文化を総合的に取り上げ学習する絶好の機会である。「命どぅ宝、21世紀にはばたく我ら」の統一テーマーは展示、舞台に共通するものである。

    内容は、具体的には「沖縄戦」「命の尊さ」「沖縄の文化」「未来への飛翔」など、今を生きる子どもたちが沖縄の過去から何を学び、現在をどうみつめ、そして未来をどう生きるか、に集約されている。

 社会が平和であるためには、戦争の危機、不安がないことはもちろんであるが、それに加えて、人々が衣食住全般にわたって、生き生きと生活し、精神的に安定した生活を過ごすことが必要である。そのような諸々について、子どもたちが改めて学ぶための文化祭であってほしいと願う。しかも、この学習は、自ら動き、行動する中で生活実感として体得していくことに最もふさわしい行事となる、ことを確信する。

2 各学級・学年における計画(抜粋)

@ 一学年全体(三学級合同)「折り鶴壁画〜平和を祈って」(展示)

○ねらい
 今年は戦後50年という節目にあたり、改めて「戦争と平和」について考えを深めようとする機運が高まっている。特に、唯一地上戦が行われ、多大な犠牲を被った我が沖縄では、戦没者の霊を慰めるため「平和の礎」も建立された。
 そういう中で、子どもたちと教師がともに戦争の悲惨さについて考えるともに沖縄戦で尊い命を奪われた20万人余の人々の冥福を祈ることで、平和を愛する心を強いものにしていきたい。

○説明
 一学年の生徒と教師全員が協力して、沖縄戦で亡くなった人々の冥福を祈る気持ちを込めて、色紙、その他で20万羽の鶴を折り、予めデザインした・図柄に合わせて、ベニヤ板にはりつけて一つの壁画として展示する。

 壁画のデザインは「平和」をイメージした明るい色調。平和祈念塔を背景に空を舞う鳩を配したデザイン。壁画の大きさは、縦約5,4m横3,6m。

A 2年1組「平和について考える〜沖縄戦をとおして〜」(展示)

○ねらい
 戦後50年目を迎え、戦争体験者が少なくなりつつある中で、沖縄戦の惨劇が若い世代の人たちを中心に風化しつつあるように思える。また、「米軍の暴行事件」から端を発した沖縄基地問題も合わせて考えていきたい。

○説明
 ・沖縄戦の戦死者数を人体の略図で表す。
 ・沖縄戦の経過。
 ・戦争中の生活、特に避難優について調べるn
 ・沖縄にある軍事基地を調べる。
 ・最近の米軍人による暴行事件から、安保条約や地位協定について考える。

B 3年1組 「命どう宝〜空き缶に願いをこめて〜」(屋外展示)

○ねらい
 終戦50年でいろいろな平和的行事が各地で行われている。その年に文化祭が開催されるので、平和をイメージした何かをと考えて、このテーマを選んだ。

○説明
 空き缶を利用して壁画を製作する。1列39個×120列で、総数4680個です。空き缶自体の色を利用する。例えば、赤なら(〇〇)、青なら(△△)である。必要な色は決まっているので、空き罐をそろえるのも大変である。

 生徒たちだけが集めるのでは、揃えるのが困難なので、各家庭の協力や地域の店などにも協力をお願いして集める。
 壁画が仕上がった時の喜びを、体で感じさせるとともに、図柄にある「命どぅ宝」と「鳩」と「沖縄」から、平和の尊さを感じてほしい。

C 3年全女子 「貫花(ぬちばな)」(舞台の部)

 群舞による表現活動である。沖縄の伝統芸能の一つである「雑踊り」を3年女子が踊る。沖縄の心を踊りを通してどこまで感得できるか。踊ることが、心の優しさを育てる。

3 まとめ

(1)対外行事、校内行事(修学旅行・社会見学等)の続くなかでの取組みであった。

〈2〉特に三学年は、修学旅行を含む学校行事の中心的存在として、生徒を活動の中心におくことは難しかったと思われる。

(3)一学年の「折り鶴壁画」は、取組みに日常性があり、一つひとつの生徒の行動が一つの作品を仕上げていく。その過程に大きな意義を見いだしたい。そして、その行動の輪が他の学年、家族へと広がっていったこと。困難と思われた20万羽の鶴折りをなし遂げたことなどを評価したい。折り鶴を作っていく過程で、生徒の中にたくさんの成長を発見した教師の感動があった。

 なお、この作品は文化祭での作品としてだけでなく、平和教育の実践としても類をみないものとして特筆しておきたい。

(4)同じことは、3年1組の「命どぅ宝」にも言えることである。3か月に及ぶ長期間をコツコツと作品の完成にむけて行動する生徒の日常性を高く評価したい。

 その過程における生徒の意欲、集中、心の揺れを重ねて完成させた喜びには、大きなものがあった。

(5)子どもたちが「ものをつくる」感動を失っている、と言われて久しい。文化祭という特設された行事の中で、せいいっぱい「つくる」行動を重ねることには、大きな意義がある。自分の手で一つひとつつくりあげていくことによって、体で覚え、心の感動につながっていく。

 そういう意味で、他の学級の例えば「人体模型」(3年4組)や「沖縄戦」(3年2組)「沖縄戦・人体図」(2年T組)などにも、生命の尊厳や平和の尊さなどのテーマ性をもった作品として、生徒自ら「つくる」作品として評価できよう。それらの作品は見るものにも、同様の感銘を与える。

(6〉他の学級の「沖縄の文化」(2年2組、2年3組、2年4組、3年3組)にも、取り組みの工夫によって生徒の「つくる」活動が展開されていたし、連綿と続く民族の文化の基盤である「衣食住」と「言葉」・「子供の遊び」に焦点が絞られていた。これらの「モノ」は、生命を維持する根幹としての位置づけとしてみれば、その製作の過程は意味が大きい。

(7) 3年5組(特殊学級)では、「折り紙による美しいいきもの」を展示した。その作業は紛れもなく「つくる」文化であった。

〈8)手を使って文化を創造してきた人類の体験を、子どもたちは間接的に経験して今後の生活の中で、その成果を生かしていくであろう。そのことが平和な社会を建設するための原動力となるのである。

(9〉3年女子の琉装による「貰花(ぬちばな)」は、見るものに深い感動を与えた。その感動が心の豊かさを育む源となる。文化祭で取り組んだ「貰花」が、美しいものを美しいと感じる心を育てたことは明らかである。1,2年女子の創作ダンスにもそれが言えよう。

(10) このように文化祭をとおして、生徒は「つくる」「まなぶ」「感動する」を体験してきた。今回の.文化祭での様々な活動は、それぞれの分野で本研究の重点目標のすべてを網羅して実践されたように思われる。一学期から取り組んできた「行事の中での平和教育」は文化祭で集大成されたと確信する。まさに、文化は平和を基盤にして栄えることを明記したい。

(11)最後に多忙の中での実践の高さは、教師集団の力量が高かったことを評価したい。

4 反響

(1)[新聞記事から]「R紙」1995年12月11日(月)
※都合によって固有名詞を伏せてあります(制作者)。

I市立M中1年120人
ツルを折る手に平和への誓い込め
20万羽で壁画制作

 【I】県と市の教育委員会から平和教育の研究校に指定されているI市立M中学校(A校長、生徒三百九十三人)の一学年の生徒が沖縄戦戦没者約二十万の数に合わせた折りづるの壁画をつくりあげ、十日、同校の文化祭で展示した。「私たちにできる精いっぱいの平利への気持ちです」と制作された壁画は、高さが三・七b、横の長さが五・五bにも及ぶ。
素材となった折りづるは生徒が「毎日、心を込めてていねいに折ってきた」。文化祭に訪れた地域の父母からは「素晴らしい出来栄え」と、生徒の努力をたたえる声が相次いだ。

 壁画は、同校の校区にある沖縄平和祈念堂を背景に平和の象徴であるハトが舞うデザイン。一学期の段階で構想され、夏休み、二学期の休み時間、放課後などの時間を利用して制作、文化祭前日の九日に完成した。一学年は三クラス百二十人のため、一人の生徒が平均二千羽の折りづるをつくりあげた。二、三年生や父母の加勢もあり折りづるの数は実際、二十万を突破しているそうだ。

 生徒がつづった壁画の紹介文では「いつの時代にも戦争は絶えません。だからこれからの時代は、この壁画のように平和な時代を私たちみんなの手でつくっていきたいと思います」と、壁画制作のようにみんなが協力して平和をつくることを呼び掛けている。

 A校長は「先生、生徒、父母が一体となって取り組む中で、子供たちが自主的、主体的に制作してきた。自分たちで平和を築いていこうという気持ちが込められている」と話していた。壁画は当面、校内に展示した後、県内の平和資料館に寄贈する考えという。

(写真)沖縄戦の戦没者の約20万に合わせた折りづるを張り合わせ制作された平和を祈念する壁画(白黒)

(2)[新聞記事から]「R紙」1995年12月12日(火)
※都合によって固有名詞を伏せてあります(制作者)。

平和願い、はばたくハト
M中3年1組空き缶で壁画を制作

 【I】地域清掃や生徒各自が集めた清涼飲料水の空き缶を使って制作した平和祈願の壁画がI市立M中学校(A校長、生徒三百九十三人)に展示され、地域で好評だ。同校三年一組の生徒三十六人が制作したもので「沖縄と平和」をテーマに、沖縄本島の地図上にハ卜が舞うデザイン。去る沖縄戦で激しい戦闘が行われた地に建つ学び舎から永遠の平和をアピールしている。

 壁画は、同校の文化祭(十日)に合わせ、生徒が一学期から企画、制作に取り組んできた。素材となる空き缶は路上やゴミ箱に捨てられていたものを生徒が集め、四千六百八十個を利用。縮小図面を頼りに一列一列、色付けはせず、缶そのものの色彩を工夫して配列し完成させた。

 壁画は、高さが約三・五b、横の長さは五b。缶は縦に三十九個、横は百二十列となっている。ハトと本島デザインの脇には「沖縄」「平和」「命どぅ宝」のメッセージも浮かび上がらせた。

 制作費は、缶をつなぎ合わせる針金の費用三千円程度。苦労したのは「デザインの色に合った缶を集めることだった」そうだ。
 制作した三年一組の担任、Y教諭は「平和教育の研究指定校であること、それに文化祭のテーマである『命どぅ宝 二十一世紀にはばたく我ら』のテーマに沿い生徒たちが平和をアピールしようと意欲的に制作してきた。戦後五十年ということもあり良い取り組みができたと思う」と話している。

 壁画は今年いっぱい校舎前面に展示し、来年片付ける考え。アルミ缶はリサイクルに回すそうだ。
(写真)3年1組の成36人が制作した平和を祈る空き缶壁画(カラー)

(3)[新聞記事から]「O紙」1995年12月13日(水)
※都合によって固有名詞を伏せてあります(制作者)。

「平和」テーマに文化祭   I市M中学校
沖縄戦掘り下げる  20万羽の折り鶴壁画制作

【糸満】命どぅ宝、21世紀にはばたく我ら──をテ−マにI市MのM中学校(A校長)で十日、文化祭があり、沖縄戦の実相や平和の問題を生徒自身の手で掘り下げる企画が展開された。平和教育研究校としての取り組みの一環。沖縄戦での日米の戦力比較を沖縄本島を取り巻く軍艦の模型で表現したり、戦没者の多さに迫り、平和を願おうと二十万羽の「折り鶴壁画」を制作。参観する父母らの目を引いた。

 三年二組の取り組みは 「沖縄戦」の展示発表。日米の戦力比較を視覚に訴え掲示物では「過去のことなんか知らないよ、という人は未来についても何も考えない人」「よりよい未来の設計資料は歴史の中にある」と、「戦争にどう対じするか」を考えさせる高校生の手記を紹介した。

 そのほか四千六百個余の空き缶で沖縄とハトを猫いた壁画「命どぅ宝」(三年一組)や、一年生合同の「二十万羽折り鶴壁画」、展示発表「平和を考える」(二年一組)の二十三万人の人体図−など「どうすれば沖縄戦を実感できるか」と工夫を凝らした。

 三年二租のS教諭は「悲惨な戦争が直接繰り広げられた地域だけに、これまで生徒も『また戦争の話』という風だった。が、今回、自分たちで資料を集め、数字や視覚でとらえるなかから、沖縄戦を自分たちへ引き付けることができたのでは」と意欲的な取り組みを評価していた。
(写真)「悲惨」「激しい戦争」から数字や視覚的な資料で沖縄戦を掘り下げたM中の文化祭=三年二組の展示から(白黒)


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